Firefox 3.1にはHTML5で規程されているvideo要素とaudio要素のサポートが追加され、Firefox自身が少なくともvideo要素対応としてOgg Theoraを、audio要素対応としてOgg Vorbisをネイティブサポートすることが開発の方向性として示されている。これはつまりOgg Theora/Ogg VorbisプレーヤがFirefox 3.1の登場とともに一気に広まることを意味している。
同発表に対して懐疑的な反応を示す向きも少なくない。Ogg Vorbisはまだ利点があるからいいとしても、H.264よりも劣るところがあるOgg Theoraが標準の動画フォーマットとして普及するとは思えず、結果的にこうした取り組みにはそれほど意味がないのではないか、というわけだ。
こうした疑問に関してはWell, I'm Back: Why Ogg Mattersがひとつの説明としてよさそうだ。まず本来の目的として、Mozillaはロイヤリティフリーで自由に使えるデコーダが必要であるという観点からOgg Theora/Ogg Vorbisの採用は適切というもの。H.264やVC-1を採用したいものの、MPEG LAパテントが期限切れになるか許可がおりないかぎりは使えない。Ogg TheoraのサポートとしてはすでにOperaも実験的なサポートバージョンを公開しているし、HTML5には取り込まれなかったものロイヤリティフリーのフォーマットとしては代表的な存在であり妥当な選択肢というわけだ。
一番疑問視されるのはOgg Theoraが普及するのかどうかだが、Ogg Theoraのデコーダは現在改善が続けられており、より優れた動作をするようになってきている。エンコーダについても同様に改善が取り組まれている。同じビットレートではたしかにH.264の方が優れているが、より扱いやすい実装があれば、プラグインをインストールすることなくそのまま使える動画デコーダは悪くない選択肢だ、というわけだ。
Ogg TheoraやOgg Vorbisは現状でもプラグインをインストールすれば演奏できる。しかしFirefoxがネイティブにサポートし、プラグインをインストールすることなくそのまま使えるようになるところが大きい。最終的にはコンテンツプロバイダがどれだけOgg TheoraやOgg Vorbisに対応するかが決め手になり、しかもブラウザのシェアを考えるとあと数年は状況がかわることはないかもしれないが、最初の取り組みとしては悪くない選択といえそうだ。