ヤフーとジャパンネットバンクは4日、Yahoo!オークションにおいて電子マネーによる新しい決済方法「JNB電子マネー」を導入することを発表。同日、サービス内容についての説明会を行った。このサービスは昨年12月にヤフーが発表した、オークション商品未着トラブル撲滅に向けた詐欺対策の一環として導入をアナウンスしていたもの。同対策の中心となる「受け取り後決済サービス」の利便性向上を目的としている。サービス提供は5日より開始される。

オークション詐欺対策の取り組みと現状

説明会ではまず同社オークション事業部長 八代峰樹氏より、商品未着トラブル防止のための具体的な対策と現状について発表が行われた。

Yahoo! JAPAN オークション事業部長 八代峰樹氏

「受け取り後決済サービス」や「代金引換」などの安全性の高い取引方法の推奨・導入を進めることを中心に、それまでトラブルの多かった「カーナビゲーション」「携帯電話本体」「ギフト券」カテゴリでの取引ルールを順次変更。また不正ID売買に関する啓発活動として「やめようID売買」ページを公開、不正IDによる詐欺対策を強化した。さらに「知っておきたいトラブル対応」「実録 オークショントラブル」など具体的対策や事例を挙げた啓発活動を行っている。

同社が2007年12月に発表した対策

これらの対策について、現在までの実施状況

オークションのシステム面においても、「代金支払い管理サービス」の導入や、第三者に対して入札者のIDを非表示化することで、出品者以外の人物による"オークション振り込め詐欺"を防止するなど、様々な対策を進めてきた。

「実録 オークショントラブル」実際の詐欺手口や詐欺の多い商品カテゴリランキング等を掲載、啓発を呼びかける

「代金支払い管理サービス」代金支払いをジャパンネットバンクが一時預かることで未着・不払いを防止する

これらの対策の結果、オークション詐欺被害は大幅に減少。2008年第1四半期における被害発生率は約0.003%になっているという。八代氏はこれについて「これまでに行ってきた様々な取り組みの効果が出ているのではないかと自負している」と述べた。

詐欺被害者と金額の推移。具体的な数字は示されていないが、グラフ上で2008年第1四半期の被害者数は前年同期比で約1/4。最も被害の大きかった2005年第3四半期の被害金額は1億円以上だったという

電子マネー導入で「受け取り後決済サービス」利用促進を

続いて、同社決済関連事業室リーダー兼ジャパンネット銀行取締役 田鎖智人氏より、新たに導入される「JNB電子マネー」の枠組みについて説明が行われた。

Yahoo! JAPAN 決済関連事業室リーダー兼ジャパンネット銀行取締役田鎖智人氏

オークション詐欺対策の中心となっているのが「受け取り後決済サービス」や「代金支払い管理サービス」などYahoo!ネットバンキングを利用した決済の促進だが、これらを利用するにはこれまでジャパンネットバンク(以下、JNB)に普通預金口座を持つ必要があった。しかし、口座開設には銀行法で本人確認が必要となっており、書類提出等の手続きのために申し込みから開設まで1週間程度を要するなど、利用開始までの敷居が高い。実際、現時点での「受け取り後決済サービス」利用割合は「数字は非公開だが、まだ少ない」(田鎖氏)という。

これに対し、今回発表された「JNB電子マネー」は預金口座ではないため、Web上の手続きのみで即時開設できるのが利点。Yahoo! JAPAN IDを保有しYahoo!ウォレットに登録していれば、JNBに口座がなくてもチャージ・支払いともに利用が可能だ。

どの銀行とも代金受け取り・支払いが可能。ゆうちょ銀行にも対応している

電子マネーだが、JNBを通じて自動的に換金されるため一般の銀行口座と取引ができる

他の電子マネーとの比較。自社グループでの利用を中心にする流通系と異なり、「銀行系電子マネーとして決済を限りなく便利にしていくことを目指す」(田鎖氏)

Yahoo!オークションにおいて落札者が同サービスを利用することの利点は、同社が推進する安全性の高い決済方法が、JNBの口座開設手続きなしに利用できるほか、一般の銀行振り込みにも利用できるため、Yahoo!ショッピングや楽天市場等、他サービスでの買い物でも安い手数料で振り込みを行えること。いずれの決済方法においても自動的に換金が行われるため、他の電子マネーに比べて利用シーンの自由度が高い。

出品者側も同様に、落札者が安心する「受け取り後決済サービス」「代金支払い管理サービス」をJNBの預金口座がなくても利用できる。落札者から振り込まれた金額はワンタイム口座を通じて電子マネー化して受領し、最終的には自分の銀行口座へ換金・振り込みを行い現金化が可能となっている。

匿名取引が可能な「受け取り後決済サービス」により、個人情報開示に抵抗があるユーザーもオークションに参加しやすくなる

やや乱暴に要約するならば、出品者・落札者ともに仮想のJNB口座を持つことで、詐欺に対する安全性の高い決済方法を利用でき、さらに手数料の安い振り込み環境としてオークション以外にも利用できることになる。この仮想口座を電子マネーという形にすることで口座開設のハードルが低くなるのが普通預金口座との大きな違いだ。同社にとっては取引情報が残ることでトレーサビリティが向上し、有事の際に適切な対応を取ることにもつながるという。

このサービス導入により、同社ではオークションにおける安全性の高い決済サービスの利用促進に弾みを付けたい考えだ。