富士通 代表取締役社長 野副州旦氏

富士通は5日、記者会見を開催し、6月23日に代表取締役社長に就任した野副州旦氏が社長就任後の経営方針について説明を行った。

冒頭、野副氏は、「前社長の黒川氏が5年間をかけて作り上げてきたものをいっそう強くすることをベースに富士通の強さを表に出す経営を行っていく」と語り、2007年度より開始した3カ年の中期経営計画の目標達成を目指した経営を行うことを示した。

また、「この約1カ月の間、新社長就任ということで、数百社の企業を回り、多くの顧客と会ってきた。その都度、前社長の標榜してきた"お客様起点"経営について、期待や感謝の言葉を受けた。そうした体験から、富士通と顧客のパイプの強さを実感。こうしたものをいかにグローバル視点で展開していくかが、私に求められる経営のあり方」(同)と、経営方針の大筋を説明した。

"お客様起点"の徹底するためには、「"現場""現実""現物"の3現主義の下でお客様に対するスピードを上げ続け、約束した品質を徹底して守り続ける」(同)と、元品質担当らしいやり方を行うとする。

また、"起点"の変革を行っていくとし、「お客様ではなく、その先にあるお客様のお客様が、いかにITによって価値を生み出してもらえるかという"お客様のお客様起点"」(同)といった深堀のほか、「拠点ごとの戦略実行をグローバルでの展開を考慮した"グローバル起点"ならびに環境問題に対して深く取り組む"地球環境起点"」(同)の3つの起点を実行指針とするとした。

3つの起点を今後の実行指針として提示

現在の同社のビジネスの状況は、2002年以降は株式の売却や年金改革などの効果もあり増収増益を達成してきた。しかし、「これからは本業以外にはあまり関心がない。営業外で利益をいくら上げても富士通本体が強くなるとか、富士通グループの強さとしてはどこまで自慢できるか」(同)とし、今後は本業をいかに強くしていくかが鍵になるとした。

その本業であるが、同社には"テクノロジーソリューション""ユビキタスプロダクトソリューション""デバイスソリューション"の3つの事業分野があり、全社売り上げの57%、営業利益の68%を占めるテクノロジーソリューションが占めている。中でも、売り上げ/営業利益の大半を占める"ソリューション/SI他"と"インフラサービス"の2つのサービス部門が事実上の事業の柱といえる。

富士通のビジネス構造(テクノロジーソリューションが売り上げの半数を占める)

富士通のポートフォリオ(利益貢献できる"強い商品"としてのプロダクトビジネス、次の成長への"挑戦"領域としての海外ビジネスを利益・清涼両立の領域へと引き上げることを目指す)

サービスビジネスはソリューション/SI部門などを中心に改革が行われてきており、「やっと普通の状態になった。成長を目指すのはこれからの富士通にとっての大きな課題。特に海外ビジネスは事業成長が期待できるものの、"課題事業"でもある。しかし、それと同時に新規の事業エリアであるという捉え方で、徹底した追及を行っていきたい」(同)とした。

その海外事業、2004年から2007年度までの売上高をCAGRで見ると11.8%と、国内の1.7%と比べ圧倒的に高くなっている。「今後も2桁の成長が見込めるが、買収効果が充分に出ていない、グローバルなパートナーシップの効果が充分に生かしきれていない、などの課題がある」(同)とし、このための施策として、経営執行役上席常務のリチャード・クリストウ氏をビジネスグループ長とした海外ビジネスグループを構築。これまで各地域ごとに実行してきた戦略をグローバルビジネス本部が縦断的に関与し、各地域代表らが話し合い、戦略を決定する場を設けることで、世界で同レベルのサービスの提供を実現し、グローバルに成長戦略を実行する体制を整えた。

グローバルに成長戦略を実行するために海外ビジネスグループを設立し、戦略の決定を行う

なお、この数日、SAPやCisco Systemsなどが富士通を訪問し、新しいグローバルなWin-Winの関係の構築を目指した申し出を行ってきており、「海外からも富士通に感心を持ってもらっている」(同)とした。

また、8月1日付けで「特定社会システム監視本部」を設置したことも明らかにした。これは、東京証券取引所のような社会的に大きな影響のあるミッションクリティカルシステムを第3者視点で集中監視するというもの。「私は黒川前社長のようにSEでもなければ、システムを語れるわけでもない。しかし、富士通グループとして、システムを預かっている以上、1つの社会システムとして責任を持つ必要がある。これは経営トップ自らが責任を持ち、経験とノウハウを持つチームを置き、第3者機関として運用することで問題を起こさないようにする仕組み」(同)とし、実際のチームのトップにはNTTドコモの社会システムを担当した経験を持つ経営執行役の小林一雄氏を据え、全権を与え取り組みを行うという。

社会システムの安定運用を目指し、「特定社会システム監視本部」を設置

なお、中期経営計画実現に向けた今後のテーマとしては、「国内ビジネスの収益力を磐石にする」ことと「海外ビジネスの成長力と収益性を高める」こと、そして課題事業の「選択と集中」が必要であるとし、ビジネス改革の加速と新たな取り組みを進めていくとした。