富士通 加藤和彦 経営執行役上席常務(CFO)

富士通は2008年度第1四半期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比0.9%増の1兆1,772億円、営業利益は同97.2%増の58億円、経常利益は同2.41倍の84億円、当期純利益は3億円(前年同期は147億円の赤字)で、黒字に転換した。携帯電話基地局、システムインテグレーター(SI)事業の増収、パソコン、HDDのコスト削減などが貢献した。同社では、売上高は円高による影響を除くと5%の増収であるとしている。

同社の中核であるテクノロジーソリューション分野は、売上高が同2.2%増の6,979億円で、国内は同8.1%増の4,408億円だった一方、海外は同6.6%減の2,570億円だった。営業利益は82億円、前年同期比で43億円増加した。同分野の稼ぎ頭、サービス部門は、売上高が同2.3%増の5,551億円、国内は7.3%の増収、海外は4.8%減だが、為替の影響を除くと7%の増収。営業利益は119億円で、前年比31億円の減となった。SI事業が、公共、ヘルスケア、金融分野などで伸長、アウトソーシングサービスも引き続き堅調に推移したものの、欧州での民需系ビジネス拡大強化にともなうコスト負担、国内での先行投資費用の負担が増大した。

テクノロジーソリューション分野のうち、システムプラットフォームは、売上高が同1.5%増の1,427億円だ。前年度後半から、携帯電話基地局の売上げが回復したとともに、通信事業者向けのルーター装置が伸張しことなどが寄与した。国内では11%の増収だった反面、海外は14.2%の減収となった。ただ、為替の影響を除外すると、ほぼ前年並みだ。北米の光伝送システムが好調だったが、UNIXサーバーが減収となった。営業損益は37億円の損失だが、前年同期比で74億円改善した。

パソコン、携帯電話、HDDなどが含まれるユビキタスプロダクトソリューション分野は、売上高が同1.0%減の2,718億円だった。この分野も国内は6.7%の増収だったものの、海外は14.5%の減収だ。欧州でのパソコンの競争激化が響き、為替の影響を除いても8%の減収だ。パソコンは企業向けを中心に増収だった。ただ、出荷台数は163万台で前年比3%の減。 携帯電話は、携帯電話事業者各社が、販売形式を改変したことにともない、買換えサイクルが長期化していることから、端末販売が影響を受け減収となった。出荷台数は160万台で、対前年比11%の減だ。2007年度の第1、2四半期には、中高年齢者層向けのらくらくホンが好調だったが、第3四半期以降、他社も追随をはじめており、今四半期は、これらの影響を受けているとみられる。

ユビキタスプロダクトソリューション分野の営業利益は99億円で、24億円の減。パソコンの部品コスト削減の効果があったほか、ノートパソコン向けHDDが、垂直磁気記録方式の新機種の生産拡大で改善したが、携帯電話の減収とともに、その高機能化によるコスト増といった要因が利益を縮小させた。

LSI、電子部品などのデバイスソリューション分野は、売上高が同8.8%減の1,723億円で、国内は13.5%減だ。フラッシュメモリや基盤ロジック製品が伸び悩んだ。海外は0.2%増となっている。アジア向けを中心にロジック製品が伸びた。為替の影響を除くと15%の増収になる。営業損益は47億円の損失で、昨年度比で11億円悪化した。LSIは、6月に発生した、岩手・宮城内陸地震により、基盤ロジックを生産する、岩手工場が一時、操業停止したことの影響も受けた。電子部品他は、為替の影響、価格競争激化などにより減益となった。 地域別の状況をみると、売上高構成比率では、日本が66.7%、海外は33.3%で、ほぼ従来通りだ。海外売上高は、対前年同期比4.6%減の4,615億円で、これも為替の影響を除くと4%の増収だった。しかし、営業利益は3億円で、前年同期と比べ57億円の減となっている。米州での、次世代ネットワーク関連の開発費用増加、アジアパシフィック・中国での、生産拠点のコスト削減の足踏み、サービス事業の規模拡大にともなう販売費、一般管理費が増加したことなどが響いた。

ここまでの業績は、同社が5月に公表した見通しに対し、売上高で272億円、営業利益では58億円上回っている。同社の加藤和彦 経営執行役上席常務(CFO)は「米国経済の減速、景気の先行き不透明感から、一部に投資抑制の動きはあるが、公共、ヘルスケア、金融分野などのSIビジネスは伸び、テレコム系、地方自治体関連も堅調で、国内のIT市場は悪くない」と指摘した。

ただ、原油に代表される資源価格の高騰、米国のサブプライムローン問題に端を発した金融不安など、経済全体の状況には懸念材料があり、パソコン、携帯電話、HDDも競争環境が厳しい。こうした現況が背景にあり、同社では、期初(5月)に発表した、今年度通期見通しは変えていない。加藤常務は「当社では、第4四半期に受注が集中する傾向があり、危機感はある。2008年度の計画達成に向け、着実に手を打っていきたい」と述べた。