最先端の映像やデジタルアートの上映、展示、体験イベント「ヨコハマEIZONE2008」が7月24日~7月29日の5日間、横浜にて開催された。同イベントでは「映像の"今"がわかる」をテーマに、先端技術を使った映像作品が多数紹介された。会場は、赤レンガ倉庫を中心とした横浜・みなとみらいの全6カ所。

横浜市は、映像文化創造都市を目指しており、新しい映像産業の芽を作ろうとしている。その一環として生まれたイベントが「ヨコハマEIZONE」だ。同イベントでは、有名クリエイターの、ここでしか観ることのできない作品上映や、これからクリエイターを目指す学生たちの作品展示などが行われていた。

メイン会場である赤レンガ倉庫1号館のショーケースでは、優良な日本のデジタルコンテンツが多数展示されていた。クリエイター、プロダクション、企業のほかに最先端の映像の研究を行っている大学などが、娯楽、芸術性、技術の三つの切り口で作品を展示した。

主な展示ブース

「アニ*クリ15」ブースでは、押井守監督、今敏監督などの1分間アニメを上映。押井監督作品では、情報の海で生まれた人魚の物語が描かれる。どの作品も1分間と短いが、クオリティーは高い

「ディー・エル・イー」ブースでは、『鷹の爪の休日』と題したショートストーリー作品などを上映しており、たくさんの人で賑わっていた。他にも現在、放送中の『ファイティング☆シリーズ』や劇場版『秘密結社 鷹の爪』シリーズなどの作品も紹介されていた

「動画革命東京」ブースの様子。新鋭クリエイターに資金を援助し、全8作品のパイロット版映像を製作。そのデモ上映が行われていた。宮崎駿に師事した経歴を持つ糸曽賢志の『コルボッコロ』の手書き2Dアニメーションが印象に残った

「FANWORKS、オンリーピック」ブースでは、2008年8月8日より公開される映画『東京オンリーピック』の予告編を上映。他にも代表作『やわらか戦車』など有名な作品の上映も行われていた

「明和電機」ブースでは、雑誌付録である3000円台のアナログシンセサイザーを大胆かつ真剣に改造した作品を展示。ちょうどシンセサイザーの微調整をしていた「明和電機」代表取締役社長・土佐信道を発見

「ROBOT」ブースでは、個人的に好きなスキマスイッチの『アカツキの詩』のPVが上映されていた。曲にマッチした2Dアニメーションに思わず見入る。他にも、「仏アヌシー国際アニメーションフェスティバル2008」グランプリを受賞した加藤久仁生の『つきみのいえ』予告編も上映されていた

「Animations」ブースでは、アニメーション作家・山村浩二の『Animationsロゴアニメーション』などを上映。ライアン・ラーキンの『ストリート・ミュージック』など、日本ではまだあまり知られていない優れた海外作品も上映されていた

「DEVIL ROBOTS」ブースでは、「トーフ親子」など過去の作品や、2Dアニメーションなど、様々なタイプの映像の一部をまとめて上映していた。「DEVIL ROBOTS」は、ファッションブランドとしても、人気なキャラクターを輩出している

NHK「デジタル・スタジオ」ブース。アニメーションクリエイター・児玉徹郎の描いた手書きの背景と、3DCGアニメーションとを合成した作品「THE RUNNINGMAN」が上映された。また、歴代デジスタ入賞作品を中心に、名作・話題作の数々を上映していて、見ごたえあり

また今年の「ヨコハマEIZONE2008」では、「Campus」、「Advertising」と題し、大学から生まれた最先端映像作品や、企業広告の事例を紹介していた。

Campus

斬新かつユニークなアイディアが詰まった作品が多く展示してあった「Campus」。デジタル映像、インタラクティブな先端映像の研究、制作に力を入れている大学にスポットを当てているとのこと。参加大学は女子美術大学、東京工芸大学、東京大学など

Advertising

「ペプシNEX」の未公開映像が楽しめた「Advertising」。新しい映像手法を使ったインタラクティブな広告など、最先端の広告表現を紹介していた

今回、ショーケースに参加している「明和電機」代表取締役社長である土佐信道は、「ヨコハマEIZONE」について「ヨーロッパなどでは、ひとつの都市とメディアが『ヨコハマEIZONE』のようなお祭りを行うケースが多いのですが、日本では横浜以外あまり行われていないので、貴重な場です。日本でも町おこしのような感じで、このようなイベントが増えていけば……」と語った。また「ディー・エル・イー」のキャラクタービジネス部の根本智彦氏は「私たちのアニメは、インターネットから始まり、深夜のアニメ番組になりました。せっかく作品を制作しても、観せる場が限られていると意味がないのです。普段観てもらえない子供たちや、若手クリエイターの方々に、こうして観てもらえる機会があるのは喜ばしいことです」と「ヨコハマEIZONE」への出展メリットを語った。クリエイターや企業も、こうしたイベントを待ち望んでいたようだ。 

「明和電機」の代表取締役社長・土佐信道
(C) Yoshimoto Kogyo Co., Ltd. / Maywa Denki
Photo:Jun Mitsuhashi

根本氏によると、ディー・エル・イーでは、インターン生でもアニメーションディレクターの下で働けるシステムがあるという
(C)蛙男商会/DLE

去年の「ヨコハマEIZONE」では、Flashを用いた作品が注目を集めていた。だが、今年の「ヨコハマEIZONE」の出展作品において、Flashはごくスタンダードな手法となっていた。このように技術の進化が早い昨今、「ヨコハマEIZONE」が、来年以降どのような進化を遂げ、どのような最新技術や、最先端映像作品を我々に見せてくれるのか非常に楽しみだ。