米VMwareは7月28日(現地時間)、同社のサーバ向け仮想化(バーチャライゼーション)製品の「ESXi」の無償化提供を発表した。同日付けで最新バージョンのESXi 3.5 update 2の提供が開始されており、ユーザーはVMwareのサイトからソフトウェアをダウンロードして無料で利用することができる。現在、MicrosoftがWindows Server 2008向けにハイパーバイザの「Hyper-V」を28ドルという低価格で提供しているほか、オープンソースのXenをベースにしたハイパーバイザも多くの商用製品で利用が広まっており、これらライバルに対抗するのが狙いとみられる。
ESXiは物理サーバ1台のスタンドアロン環境向けのエディションで、VMwareのハイパーバイザ製品の中でも一番下位のバージョンにあたる。占有ディスクスペースが32MBと最小構成なのも特徴となる。ユーザーはESXiをベースに複数の異なるOS環境を築くことが可能で、いわゆるハイパーバイザを介してサーバ統合を実現できる。従来までESXiの最小構成の価格は495ドルとなっていたが、今回の発表でこれが無償化される。これまでクライアント向けの仮想化製品が無償提供されることはあったが、ハイパーバイザの無償提供は同社初となる。大規模環境向けで上位バージョンにあたるESXや同インフラを管理するInfrastructureなどは従来通りの提供形態となり、今回は下位バージョンの無償提供でユーザーの裾野を拡大するのが狙いとみられる。なお、仮想化環境の管理を自動化する「VMware Infrastructure(VI) Toolkit for Windows」の提供開始も同日付けでアナウンスされている。
ここに来て急速に広まりつつあるサーバ向け仮想化技術とハイパーバイザだが、早くも激戦の様相を呈している。同分野では一歩リードするVMwareに対し、オープンソースのXenはRed HatなどのLinuxディストリビューションを中心に勢力を拡大し、現在ではSun xVMやOracle VMなど、派生環境にまで広く浸透しつつある。また従来のホストOS/ゲストOSのスタイルでサーバ向け仮想化技術を提供していたMicrosoftも今年に入り、Window Server 2008の付属ソフトウェアの扱いでハイパーバイザ「Hyper-V」の提供を開始している。Hyper-VはWindows Server 2008とのセットで利用するのが前提となるが、OS本体の価格から考えれば破格ともいえる28ドルという低価格が設定されており、これが先行するVMwareにとって大きなインパクトを与えることになるとみられる。こうしたなか、主力製品の一部無償化という形でVMwareが牽制した格好だ。