グランプリは市井昌秀監督の『無防備』に決定!

25日都内にて「第30回ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)の「PFFアワード2008」授賞式が行われた。全601応募作品の中から、市井昌秀監督の『無防備』がグランプリに選ばれた。

PFFアワード2008授賞式の様子。グランプリを受賞した市井昌秀監督(下段中央)

富山県出身の市井監督は、一昨年の「PFFアワード2006」で準グランプリを受賞。今回は妻が妊娠したのをきっかけに出産をテーマにした作品『無防備』を撮影し、PFFの第30回という節目の年にグランプリに輝いた。市井監督は「賞を取るために映画を撮っているわけではないが、受賞は励みになります。無事に生まれてきた息子に感謝したい」と笑顔で挨拶した。

『無防備』でグランプリと同時に技術賞も獲得した市井監督

「PFFアワード2008」には最終審査員として佐藤純彌(映画監督・『男たちの大和/YAMATO』(2005年)等)、石井聰亙(映画監督・1978年PFF入選)、孫家邦(映画プロデューサー・『空中庭園』(2005年)等)、森本千絵(アートディレクター・Mr.Childrenのアートワーク等)、香取慎吾(歌手)の5名が名を連ねた。

グランプリを受賞した『無防備』について香取は「衝撃的な出産シーンがあるが、それが選考理由ではない」と語った。そして同作品が持つテーマ性や技術面などが総合的に評価されてのグランプリ受賞であることを強調した。

授賞式の最後には、最終審査員の全体講評が述べられた。佐藤監督は「自主制作映画としては十分に仕上がっているが、お金を貰って観てもらうレベルには達していない」と語った。また石井監督は「欠点を補ってあまりある力が作品にあったが、脚本、構成力はまだ弱い。録音をないがしろにしていて極端に完成度を落としていた」 とコメント。このように、現役の映画監督からは、辛辣な意見もあった。

このようなプロからの厳しい批評に晒されるのも、未来の映画監督たちにとっては貴重な経験であるはず。若い映画監督たちの作品を世の中に披露し、その才能を継続的に育成していく場として、PFFアワードはこれからも日本映画界にとって欠かせない存在として機能していくだろう。。

市井昌秀監督の作品『無防備』。出産を控えた同僚と接するうち、過去に流産で負った心の傷がよみがえる女性の姿を丹念に描いた作品

PFFアワード2008の各賞発表

作品名・監督名
グランプリ
技術賞
GyaO賞
『無防備』市井昌秀監督
準グランプリ
エンタテインメント賞
『マイム マイム』岨手由貴子監督
審査員特別賞 『かざあな』内田伸輝監督
『症例X』吉田光希監督
審査員特別賞
企画賞
『GHOST OF YESTERDAY』松野泉監督
観客賞
『蝉顔』 野田賢一監督・角田裕秋監督

岨手由貴子監督の『マイム マイム』

野田賢一監督・角田裕秋監督の『蝉顔』

内田伸輝監督の『かざあな』

吉田光希監督の『症例X』

松野泉監督の『GHOST OF YESTERDAY』

PFF入選者のこれから

森田芳光、犬童一心、黒沢清、塚本晋也といった日本映画界をリードする偉大な監督達もPFF入選経験者。PFFでは、グランプリ受賞者以外の入選者にも、大きなチャンスが与えられる。

例えば、優秀な入選者には、長編映画製作援助システム「PFFスカラシップ」の権利を獲得するチャンスが与えられる。面接を含めた企画コンペティションから選ばれた1名が、専任プロデューサーのもと、プロのスタッフと共に長編製作にチャレンジできるのだ。また若干名の志願者が早稲田大学大学院国際情報通信研究科に入学でき、映像製作を2年間しっかりと学ぶ機会を与えられる。また、入選作はDVD化されて、TSUTAYAほか全国のショップで販売・レンタルされる。