米オラクルは、EPM(Enterprise Performance Management: 企業パフォーマンス管理)ソリューション「Oracle Enterprise Performance Management System(Oracle EPM System)」を発表した。この製品は、同社が2007年に買収した米ハイペリオンの業績管理アプリケーションやBI(Business Inteligence)アプリケーションを、共通の基盤の上に統合、「Oracle Applications」と連携、企業活動を多角的に管理、分析して、迅速、適切な意思決定ができるよう支援する。

「Oracle EPM System」では、「Oracle E-Business Suite」との統合が進展、EPMアプリケーションから取引システムなどに、直接アクセスできる。また、オラクルの製品統合の中核である「Oracle Fusion Middleware」に準拠しており、既存のIT投資を活用し、総所有コストを低減できるという。

今回の製品で、同社は「オペレーショナル・エクセレンス(卓越した業務遂行)から、マネジメント・エクセレンス(卓越した経営管理)へ」を主題として掲げている。同社のチャールズ・フィリップス社長は「これまで当社は、企業の効率性を向上させるインフラを提供してきており、オペレーショナル・エクセレンスを拡大してきたが、いま最も求められているのは、もっと効果的な経営管理だ」と指摘、「Oracle EPM System」は、このような潮流に応えたソリューションであることを強調している。

「Oracle EPM System」は複雑性を回避し、単純であること、また、分断ではなく一貫した構造を大きな主眼としており、そのひとつとして、横断的な利便性を提供するのが「Oracle EPM Workspace」だ。「Oracle EPM Workspace」は、1か所からさまざまな機能にアクセスできるポータルで、ビジネスに必要な情報のすべてを管理することができ、ダッシュボード、レポートなどを一覧できる。

EPMの多様な機能に一元的にアクセスできる「Oracle EPM Workspace」

「Desktop Gadgets」と呼ばれる機能は、BIツールやレポートツールの情報をデスクトップ上に表示する。これらのツールが企業活動を監視した結果、何らかの変化が検知された場合、それをアラートのように通知することなども可能だという。

多次元分析ソフト「Oracle Essbase」との統合を強化、「Oracle Essbase」用のウィザード形式の新型デザイン環境「Essbase Studio」を備え、多次元分析キューブやアプリケーションの作成、展開、管理を簡素化している。

共通基盤の面では、プロビジョニングやアプリケーションの管理が一元化されている。新たに開発したモジュール「Calculation Manager」では、プランニングや財務統合アプリケーションを通じて、公式、計算式など、いわゆるビジネスルールを容易に設計、認証、管理することができる。

「Oracle EPM System」は、SOA(サービス指向アーキテクチャー)に対応しており、モジュール構造により、オラクル以外の製品との統合、相互運用が可能で、SAPなどのデータソースやプラットフォームにも対応している。また、Excel、Wordなどを利用するユーザー向けに、これらをはじめとする「Microsoft Office」のアプリケーションとの連携機能もあり、双方向で、データのやり取りができる。

さらに「Oracle EPM System」は、SaaS型供給の「On Demand」と各企業内部にシステムを配置する「On Premise」の両方のモデルが準備されている。

米オラクル ビジネス・インテリジェンス&パフォーマンス管理担当 シニア・バイスプレジデントのジョン・コプキ氏は「EPMは、マネジメント・エクセレンス(卓越した経営管理)への対応が"次の波"であり、今回、次の水準にいける準備が整った。多くの企業がERP、CRMを導入しており、オペレーショナル・エクセレンス(卓越した業務遂行)は進んできたが、一方で、多数の表計算ソフトやBIツールが稼動しており、統合化された、大規模な経営管理が実現していないことが課題だ」と話す。

マネジメント・エクセレンスを実現させるための3つの柱として、コプキ氏は「スマート」「機敏であること」「連携」を挙げる。企業の情報システムを合理的なものにするとともに、全社員がいち早く足並みを揃えて動けるようにすること、そして、ビジネスに対し、共通の見解をもつことが重要であるとしている。

日本オラクルでは今年の2月にEPMの基本戦略を発表しており、その時点ではまだ製品名を「Oracle|Hyperion EPM System」と表現していたが、今回は「Hyperion」の文字が外れ、ハイペリオン製品群の、オラクル製品体系への融合が一段と進行したことを示しているようだ。EPM製品群の基盤が整備されるとともに「マネジメント・エクセレンス」という、新たな戦略の基本姿勢が明らかになり、米オラクルのEPM分野への取り組みはいよいよ本格化することになりそうだが、日本市場では、日本版SOX法など、米国とは異なる固有の要因があり、国内の事情に応じた戦略がいずれ公表されるものとみられる。