迷惑を顧みずに続々と送りつけられる迷惑メールたち。誰しもが経験しているであろうスパムメール被害だが、そのスパムメール送信に関わった人物らの"エピローグ"が最近になり話題となっている。スパムメール送信に法的規制が強まるなか、収監されたある人物は脱獄の果てに家族らと無理心中、また別の人物は実刑が確定して4年の懲役生活がスタートしており、迷惑行為の代償はあまりにも大きかった。
スパム送信で逮捕の果て、一家心中……
"スパム王(Spam King)"として知られていた人物のひとり、Edward Davidsonは2008年4月、スパム送信を取り締まるCAN-SPAM法に違反したとして21カ月の実刑判決を受け、米コロラド州にある刑務所に収監されていた。場所はコロラド州中心部のデンバーから南へ50キロメートルにあるフローレンスの刑務所で、Federal Prison Camp(FPC)と呼ばれる最低限の警備しか行われていない施設だった。
7月20日(現地時間)、Davidsonのもとを彼の妻が訪問した際、そのまま妻の運転する車へと飛び乗り、脱走を図ったという。米司法省の関連機関は22日になり同人物が脱走したことを公開し、FBIらを含む組織とともに公開捜査に踏み切った。Davidsonはこの時点で同州レイクウッドでの目撃情報を最後に消息を絶っていた。だが公開捜査開始から2日後の24日、車の中で拳銃自殺を図ったとみられるDavisonと彼の妻、そして娘の3人の遺体が発見され、スパム王の脱走劇はここに終了した。25日付けのAFP通信の報道によれば、Davidsonはまず拳銃で妻と3歳になる娘を殺害、その後に拳銃で自殺したとみられる。車内ではこのほかに生後七カ月の息子が無傷で発見されたほか、16歳になる娘が銃撃から逃れようとして脱出を図り、首に傷を負った状態で発見されたという。スパム王として知られたDavidsonの35歳の短い生涯だった(同氏の写真資料はFBIによって公開されている)。
Davidsonは2002年から2007年にかけて、Power Promotersの名称で大量のスパム送信に関わっていたとされている。当初は一般的なスパムにありがちな商品広告メールが中心だったが、後に「Penny Stock」と呼ばれる格安の非店頭公開株式銘柄を「魅力的な投資」としてスパムメールに載せて紹介するビジネスを行っていた。だが2003年末になると大統領による署名で連邦法として「CAN-SPAM Act」が成立、スパム排除に対する法律的根拠が与えられた。2004年になってもスパムは増加の一途をたどり、当初はその実効性に疑問を呈する声も大きかったが、同法を根拠にスパム送信者が検挙される例が増えつつある。Davidson逮捕もその成果のひとつで、2007年夏に起訴される直前までスパム送信を続けていたという。
あらゆる手段で個人情報を取得、46カ月の実刑
Davidsonの事件が話題になる一方で、数多く存在するスパム王のひとり、Robert Solowayという人物が米ワシントン州シアトルの裁判所で実刑判決を受け、やはり刑務所での服役生活をスタートしている。Solowayの刑期は46カ月(4年弱)と、Davidsonのおよそ2倍。Solowayはマルウェア等で乗っ取ったコンピュータを使うテクニックでスパムメールを送信しており、Microsoftら企業から訴訟を起こされている。スパムのほか、フィッシングメールやマルウェアによる個人情報抜き取りなど、あらゆるテクニックを用いて工作活動を行っており、かなり悪質だといえる。