マインドジェットは、同社が発売するビジネス・マッピング・ソフトウェア「MindManager」の導入を検討している企業などを対象にした導入事例セミナーを開催した。MindManagerは、発想や思考を視覚的に表現し、目標の明確化や創造的な発想を促すとされる「マインドマップ」を作成するソフトウェアで最新版は『MindManager7』。
マインドマップとは
マインドマップは、約30年前にイギリスのトニー・ブザン氏によって発明された。ブザン氏は著書の中で「脳の中で次から次へと展開する思考をそのまま紙に描くカラフルで視覚的なノート」(『仕事に役立つマインドマップ』ダイヤモンド社)と説明している。テーマを表す"セントラル・イメージ"を中心に描き、そこから"メイン・ブランチ"を延ばして主な考えを展開、さらにサブ・ブランチを広げてテーマを掘り下げる、というのが大まかな手順だ。
単純にリストとして項目を挙げていくのとは異なり、すべてが結びついて一覧できることで「幅広く深い思考力が得られる」(同)のが特徴。事業計画やスケジュール管理、プレゼンの準備などビジネスだけでなく、ワーク・ライフ・バランスにも役立つとしている。
ビジネス向けの機能を強化したマップ作成ソフト『MindManager』
MindManagerは、このマップをパソコン上で作成するためのソフトウェア。前述のマインドマップと考え方は同じだが、"ビジネス・マッピング・ソフトウェア"と冠するように、ビジネスシーンでの活用に向いた製品。最新版の7では、Microsoft Office Fluent UI をベースにしたインタフェースが組み込まれた。Pro版ではOfficeアプリケーションとの間で文章や情報のインポート/エクスポートを行なう機能が搭載されており、マップを使ってPowerPointプレゼンテーションを作成したり、マップにスプレッドシートを表示したりするなど、より実務の効率化につながる活用が可能だ。
MindManager Pro 7 日本語版(54,600円) |
MindManager 7 Mac 日本語版(20,790円) |
MindManager Lite 7(15,560円) |
情報科の授業とは
今回のセミナーでは、田園調布雙葉中学・高等学校の教諭である小林氏より、情報科の授業にMindManagerを導入した事例が紹介された。
小林氏は大学卒業後IT企業のシステムコンサルタントを経て同校に就任、情報科の授業を受け持っている。情報科ではパソコンやインターネットの使い方を教えるものと思われがちだが、それは一面的なものであり、氏の授業では「表現スキル、思考スキルの獲得」を大きな目的にしているという。
その中で、文章から図解を作ることを試みたが、表現やまとめに技術が必要となる図解は敷居が高いという問題があった。図解を作成するツールとしてよくPowerPointが用いられるが、メッセージ性が明確でない場合やスキルがないと、自由度が高すぎて逆に伝えられなくなりがちだという。つまり、機能に踊らされた形になってしまうのだ。
そこで導入されたのがMindManager。表現方法がツリー状に限定されているため、作りやすく、1枚に多くの情報を表現することができる。同様の手法が人気マンガの『ドラゴン桜』(三田紀房 作)で"メモリーツリー"として登場していたことから、マップの考え方を認識していた生徒もいたそうだ。ただし、マインドマップは考えを広げたり理解を深めたりする目的において使いやすいという特徴があるが、要点を人に伝えるためには改めて図解にしたほうが伝わりやすい場合があり、目的に応じた使い分けが必要である点も述べられた。
授業内容と生徒の作例
高校2年生の最初の課題では、まずマップの考え方とツールを理解するために、「授業のまとめ」という課題を提示し、マップを作成させた。生徒の作例として日本史や世界史、化学の元素記号のほか、試験勉強の項目まとめを描いたマップなどが紹介された。また、実際にやってみた生徒からは、自分で書きたい内容を理解していないとキーワードを並べただけで階層を作れないことに気付いたり、マップを作成する過程で「自分がわかっていないことがわかった」という反応が見られたという。
高校2年生の課題は「企業研究プロジェクト」。ある企業を調べて新商品のアイデアを作るという授業の中で、MindManagerを使って企業分析を行った。この課題は、「3C分析」「4P5W1H分析」など、マーケティングの手法で用いられる項目を入れたテンプレートを与え、枠の中で考えていくという方法で行われた。テンプレートに沿って必要な項目を押さえていくのも、MindManagerの活用法のひとつだ。
高校3年生では、MindManagerを使ったブレーンストーミングを行うことが試みられた。自分たちの考えることが外部で通用するかトライしてみよう、という主旨で大阪商業大学が主催するビジネスアイデアコンテストに応募することを目的に、アイデア出しの最初のステップでMindManagerを用いてマップを作成した。ここでは「駅を改善するためには」というテーマで、「サービス」「設備」などの項目を挙げリアルタイムに考えながらマップの作成が行われた。
"ツール"として目的に応じた使いこなしを
マップの構造とソフトの使い方がわかれば、テンプレートに沿って必要なことを当てはめていったり、アイデアを出すために考えを広げていったりと、場面に応じた使い方ができる。また小林氏は、人に伝えるときはPowerPointで図解にするなど、目的に合った使い分けをしたほうがよいという考えを述べ、ツールとしてはすぐに使えるが、テーマについて理解が浅いと表現に結びつかないという点を強調した。
このように、小林氏は授業を通じてマインドマップと図解の2本立てで情報を整理しやすくしたいと考えているという。情報科の授業にこのツールを導入したことで、即生徒全員の理解力が向上したわけではないと言うが、情報の分類の仕方を決めるなど自発的に頭を使って考えるようになったり、テスト前の勉強の効率をアップさせた事例も見られるとのことだ。知らなかったものを知ったということ、また選択して自ら使う生徒もいたという点で、応用の利くひとつのスキルを身につけたということになるのだろう。