米Yahoo!に対して委任状争奪戦を仕掛けている投資家のCarl Icahn氏はYahoo!株主らに宛てた手紙の中で7月7日(現地時間)、米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏や同社の他のエグゼクティブらと接触していたことを明らかにした。会談の内容は委任状争奪戦後のYahoo!買収計画についてだ。Icahn氏が推薦する自身を含めた役員候補がYahoo!の株主総会で新役員として選出された場合、ただちにMicrosoftに対して同社の売却交渉に踏み切る計画だという。Ballmer氏らもこの交渉に強い興味を示しており、8月1日の株主総会を機に改めてMicrosoftがYahoo!買収に乗り出す可能性が出てきた。

Microsoftが5月3日にYahoo!に対する1株あたり31ドルでの買収提案を撤回して以降、両社間で何度か話し合いが持たれたものの、Yahoo!内部の強力な抵抗もありほとんど成果が得られていない。一方でYahoo!はMicrosoftの影響力排除も考慮にGoogleとの提携も模索しており、6月13日には検索広告の分野での提携合意が発表された。だがこの提携は独占禁止法上の問題からも実際には成立しない可能性が高いとみられており、Google-Yahoo!の提携を極度に恐れるMicrosoftの影響力を排除するための単なる時間稼ぎだという見方もある。一連の戦略についてIcahn氏ら株主の一部は「Yahoo!経営陣の行動は株主利益を損なうもの」として抗議の意志を見せている。実際、Googleとの提携発表後にYahoo!株価は急落を続けており、一時期はMicrosoftが買収提案を発表した時点から3分の2程度の水準にあたる20ドル未満まで下落していた。

Yahoo!株主に対するIcahn氏の主張はシンプルだ。同氏が推薦する役員メンバーの選出が実現した場合、「Microsoftに対してYahoo!全体もしくは"検索サービス"のみの売却交渉を迅速に開始する」「(Yahoo!現CEOの)Jerry Yang氏を排し、すぐに経営に長けた新CEOに置き換える」の2つを実行すると公約している。前述の会談でBallmer氏が懸念していたのは現Yahoo!経営陣の行動であり、同経営陣の誤った判断で企業価値を損なう点にあるという。この問題を払拭できれば、Microsoftが再び交渉の席につくことに興味を示すというのが同氏の主張だ。「MicrosoftがYahoo!買収を実現した場合、買収完了までに最低でも9ヶ月、さらに世界各国での買収承認を得るのに時間をかかる可能性がある。もしこの期間に現Yahoo!経営陣が誤った経営判断を下せば、Microsoftは巨額の資金をドブに捨てる危険性がある」ともIcahn氏はコメントしており、まず経営陣の入れ替えが急務であると主張する。

一方Microsoftは同日付けの発表で、「現時点でコメントを出すのは時期尚早と考える。MicrosoftとしてはYahoo!の将来の運命を決める同社株主の権利を尊重しており、株主総会を前に諸問題にコメントするつもりはない」とIcahn氏との会談を否定はしなかったものの、直接的な言及は避けた。一方のYahoo!も公式コメントを発表しており、「Microsoftが望むならば、Yahoo!としてはいつでも買収交渉の席につく用意がある」と述べている。だがYahoo!経営陣に交渉の意志がないことはすでに明らかで、株主向けのポーズとみられる。

Icahn氏のコメント発表報道を受けて同日7日のYahoo!株価は急騰し、前日比11.99%上昇の23.91ドルで取引を終えた。