計測器メーカである米Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは、7月5日および6日の二日間、4年生以上の小学生を対象とした「第9回 アジレント・テクノロジー ひらめき工房アジレント サイエンスワンダーランド 八王子」を同社の本社・八王子事業所がある八王子市にて開催した。なお、同イベントは、任意団体「オンライン自然科学教育ネットワーク(ONSEN)」の協力、ならびに八王子市教育委員会、日野市教育委員会の後援により行われた。
参加する児童は抽選で選ばれ、近隣の小学生を中心に各日約100名(午前の部:約50名、午後の部:約50名)が参加した。9回目となった今回は、「電気と磁石の不思議とすごさにびっくり」-実験・工作で楽しむ科学の世界-をテーマに2部構成で行われた。
第1部では、「磁-Sohckを楽しもう」と題したサイエンスショーを開催。講師は、三浦市教育委員会学校教育課指導主事で、第4代(2007年)ならびに第5代(2008年)の科学の鉄人で、おもしろ博士の益田孝彦氏。
まずは、懐中電灯に使われる電池(4本)を、すべて同じ向きに直列接続すると点灯するのは当たり前だが、「その中の1本を反対向きにした場合はどうなる?」という質問を投げかけることから第1部はスタート。
「つく」「つかない」と会場の意見が分かれたところで、実際に試して見せると、その結果に児童の付き添いできた親を含めて会場がかすかにどよめいた。この実験で、子供たちの関心を一気に集めると、今日の本題である磁石の話に突入。
「アルミニウムは磁石に付かないが、中をくりぬいたアルミの四角い棒に磁石を通すとどうなるか」「銅、アルミ、ガムテープ、発泡スチロール、スチール缶、ペットボトルなどのうち、どれが磁石に付くか」といった実験を実演して見せた後に、永久磁石の中では最も強力とされるネオジム磁石によるフェライトへの着磁、そしてコイルと交流電源を用いた消磁などを実現して見せ、磁石として成り立つには磁極の向きが関連していることを説明。
ただ見せるだけではなく、実際に児童に体験してもらうことも |
こうした実演・実験を踏まえ、「磁石と鉄の違いはなに?」という問いかけ。この問いかけに対し「これが分かれば"科学者への道"が開けるかも」とは益田氏の弁である。
ショーはIH(Induction Heating)と時間旅行の話で締められ、電磁誘導を利用した金属の加熱により、火を用いなくても調理が可能になる実演などが行われた。最後は、参加した児童一人ひとりに渡されたフェライトを各自で着磁して記念の磁石を作製した。
ただのフェライトがネオジム磁石に付くことにより磁石となる |
第2部は「電池の歴史的な実験」と題し、電池の歴史上欠かせない3人の人物が行った実験を実際に児童たちが行う体験講座。講師は「戸田式霧箱」の開発者でもある北陸電力エネルギー科学館サイエンス・プロデューサの戸田一郎氏が務めた。
ちなみにこの電池の歴史上欠かせない人物たちとは、J.G.Sulzer、Luigi Galvani、Alessandro Voltaの3人で、いずれも約200年ほど前の学者である。
まず行ったのが、「2種の金属接触が味覚を引き起こす」というSulzerの報告に基づく実験。亜鉛板と銅板で舌を挟むと金属単体ではしないはずの味がするというもの。実験では実際に舌で確かめることを行ったほか、電子メロディをつなげ、実際に音が発せられることを確認したり、電流計で電流が発生していることも確かめた。
続いて行われたのが、Galvaniの"筋肉の運動における電気力に関する論考"を基にした実験。銅板と亜鉛板をカエルの足と神経にあてると足の筋肉に収縮が生じるというものである。
そして最後が「Voltaic pile(ボルタの電堆)」を基にした電池の実験。ボルタの電堆とは、銅と亜鉛の板を間に濡れた布を交互に多数積み重ねることにより、一定の電流を得ることができる装置。実際の実験では、この現象を踏まえ、"水道水"を満たしたコップに亜鉛板と銅板を入れることで、電池となることを体験した。
サイエンスワンダーランドが終了しても、子供たちの興味は尽きない(終了後、戸田氏はボルタの電堆を用いて水の電気分解をやってみせた) |
実際に参加した児童たちに感想を聞くと、「楽しかった」「また機会があればやってみたい」といった声が大半であったが、中には「(実験を体験したことで)これまでとは違った見かたができるようになった」といった感想も聞かれた。