パナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)とNTTデータは、PMCの100%出資子会社であるパナソニックMSEの発行済み株式の60%を取得することで基本合意した。これにより、NTTデータは、中期経営計画において「成長エンジン」のひとつに掲げている組込みソフトウェア分野において、携帯電話向け組込みソフトウェアの開発力強化を図る一方、PMCは、松下グループにおいてコア事業のひとつである携帯電話事業の競争力維持、NTTデータグループのシステム開発技術の活用などにより、品質、コスト力の向上を目指す。

今回の資本・業務提携の合意により、9月下旬には株式譲渡契約を結び、10月1日で新会社を発足する。社名は現時点では未定。資本金は2億円で、NTTデータが60%、PMCが40%を出資する。NTTデータからは取締役4人、監査役1人、PMCからは取締役3人をそれぞれ派遣する。パナソニックMSEがこれまで行ってきた組み込みソフトウェア開発の事業は継続するとともに、約1,000人の社員を、そのまま新会社に移管する。

パナソニックMSEは、無線システムやIP関連の通信技術、画像処理や音声処理、ストリーミング、デジタル家電制御、デジタル信号処理などのマルチメディア技術を有する組込みソフトの開発会社で、携帯電話のほか、デジタル家電、インフラ、コンテンツ配信サーバー、組み込み型機器のプラットフォーム開発、セキュリティシステムや音声合成、音声認識などで実績を持っている。2008年度のパナソニックMSEの売上高は130億円。

両者の提携スキーム

新会社の概要

NTTデータ 取締役常務執行役員 荒田和之氏

NTTデータ 荒田和之取締役常務執行役員は、「携帯電話向けのソフト開発は大規模化が進んでおり、当社が持つ大規模ソフト開発やソリューションに関するノウハウが生かすことができる。PMCの事業拡大に貢献するとともに、より幅広い顧客に対するビジネスの拡大を目指す」とコメント。今後、パナソニック以外の携帯電話メーカーなどにも成果を提供していく姿勢を示した。

NTTデータにおける組込みソフトの売上高は約100億円となっており、2年後をめどに、300億円規模にまで拡大していく考えだ。

また、パナソニックモバイルコミュニケーションズ取締役副社長兼パナソニックMSE代表取締役社長の和田良一氏は、「携帯電話の高度化/多様化によって、端末メーカーに求められる価値が変化してきている。従来は、パフォーマンスが重視され、プラットフォームやLSIが、携帯電話の性能を左右していたが、現在では、アプリケーションやサービスが重視され、それに向けた開発リソースの再配分が求められている。NTTデータグループの開発力、ノウハウを活用することで、ソフトウェア開発構造の変化に対応した体制にしていくことができる」とした。

パナソニックモバイルコミュニケーションズ 取締役副社長兼パナソニックMSE代表取締役社長 和田良一氏

現在、パナソニックMSEにおける開発者の構成は、OS/ミドルウェアプラットフォームおよび通信プラットフォームの開発者が約6割。アプリケーションおよびサービスに関わる開発者が約4割。今後、アプリケーションおよびサービスに関わる開発者の比率を高めていくことになる。「松下グループでは、まずは国内での携帯電話No.1を目指していることから、協業の成果は、当面、国内市場を対象としたものになる」という。

なお、松下電器が持つ、NECやテキサスインスツルメンツとの提携による携帯電話の開発会社との位置づけに関しては、「共通プラットフォームを共同開発していくことを目指したのがNECなどとの提携。今回の提携は、プラットフォームをベースにサービス、アプリケーションなどを開発していくという点で意味合いが異なる」と説明した。

今回の両社の合意は、約半年前に、組込みソフト開発事業を加速したいNTTデータが、PMC側に提携を申し入れたことが発端。「応用範囲は、個人向け携帯電話、企業向け携帯電話を問わずに幅広く展開していきたい。とはいえ、NTTデータでは、エンタープライズ領域にノウハウがあることから、端末を活用したシステムとしての提案に成果を期待したい」(NTTデータ 荒田取締役常務執行役員)とする。

また、PMCの和田副社長も、「PMCには、端末そのものの開発ノウハウはあるが、インフラと連動したシステムとしての開発に、今回の提携の成果が生かされるのではないか」と期待を寄せる。

なお、NTTデータ 荒田取締役常務執行役員「現在の携帯電話におけるソフトウェア開発の動きを見れば、目的/認識が共通な企業どうしが協業し、仲間が増えるのは自然の流れ」として、今後、提携の枠組みを拡大していく姿勢を見せた。

エンタープライズに強いNTTデータと端末の開発ノウハウをもつPMCの組み合わせは今後どう展開していくのか