IBMが考えるグリーンIT - 米IBM スティーブン・サムス氏が講演

6月24日から25日にかけて「GridWorld 2008」と「Next Generation Data Center 2008/Green IT Worid」が東京国際フォーラムにおいて同時開催された。

25日の基調講演では「Think Green:IBMが考えるグリーンITとは ～企業の成長と地球環境のために～」と題して、米IBM スティーブン・サムス氏が講演を行った。

「現在、世界の全エネルギー消費量の2%をデータセンターが占めているといわれている。これは航空会社の全ての機材の消費電力合計と同じ規模。さらに現在の成長率が続いた場合、2030年にはこれが8%に達するという試算がある。データセンターのエネルギー効率化は、短期的に解決できる問題ではないが大きな意味を持っている」とサムス氏は語る。

2000年から2010年にかけての10年間でサーバ需要は6倍に、ストレージ需要は69倍と大幅に拡大している。これにともなってデータセンターのエネルギー消費量は5年間で2倍になっており、このまま進めば20年で16倍という莫大な規模へと成長してしまう。

また、現在主流となっているデータセンターが開設された90年代当時と比較して、テクノロジーの密度は20倍に発達しているという。多くのデータセンターはこの要件を想定していない。そのため、企業が希望するアプリケーション導入への障害となることも少なくない。

こうした状態を解決するために、IBMは約1年前にデータセンターにおけるエネルギー効率水準の大幅な向上を実現する技術提供のためのプロジェクトとして「Project Big Green」を立ち上げている。IBM全社で毎年10億ドル(約1000億円)を地球環境のために投資するというもので、1年間で2000の顧客と契約し、40を超えるモジュラー型データセンターを構築するという成果をあげている。 「データセンターは今まさに危険な状態にある。現在の多くの問題を解決するために、IBMは今後毎年、多くのコストを投入するつもりだ」とサムス氏は語った。

IBMは企業のデータセンターのエネルギー効率化の実現と、標準化されたデータセンターの構築の2方向から、データセンターのグリーンIT化に取り組んでいる。

企業に向けて提供されるのはアセスメントとサーバ統合および仮想化による効率化支援サービスだ。企業がデータセンターのエネルギー効率化を実現するためには、まず現状を把握する必要がある。IBMのアセスメントでは、現状とその解決策、その効果が提示される。 「アセスメントの極端な例では、年間最高で53%のエネルギー節約が可能だとわかり、実践することで年間40%の節約と2年以内の資金の回収が可能だというものもある。この場合、年間1,300万円～1,800万円のエネルギーの節約となる」(サムス氏)

標準化されたデータセンターとは、モジュラー型のデータセンターを指す。企業はデータセンター構築時に建物の枠組みを重視しがちだが、実際には全体コストのうち7%程度しか建物の枠組みにはかかっておらず、60%は物理的インフラが占めている。また、データセンターの運用コストは、20年間で開設コストの約3倍になるという。そしてその大部分は、エネルギーコストだ。つまり、エネルギーを取り巻く設備投資の最適化が重要だということになる。

モジュラー型のデータセンターならば、必要となった時に必要なだけの追加が比較的簡単に行うことができる。また、モジュラー型のデータセンターは8～12週間での稼動開始が可能であり、これは従来タイプのデータセンターに対して20%程度の高効率であり、運用効率が高められたことでエネルギー消費に関しても30%程度の効率化が実現されるという。 「この1年で我々は、標準化されたデータセンターは爆発的な効率化を実現すると学習した。これをより広く適用するスケーラブル・モジュラー・データセンターを実現する。モジュラー型のデータセンターはITのニーズ、ビジネスとITの成長に柔軟に対応することが可能だ」とサムス氏は語る。

IBMではメインフレームをはじめとするハードウェアのエネルギーコスト削減と省スペース化も進めており、すべてのITリソースのエネルギー消費を管理するソフトウェア「Tivoliソフトウェア」の提供も行っている。

「グリーンITに率先して取り組むことで、成長とコスト削減の両立が実現できる。データセンターインフラの合理化を全社で推進すること、データセンター新設にあたってはモジュール型の標準化されたものを採用することを考えて欲しい。我々の技術をぜひ採用して欲しい」とサムス氏はアピールした。