米Red Hatは17日(現地時間)、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)上で新たにJBossアプリケーション・プラットフォームを提供することを発表した。Bostonで開催中のRED HAT SUMMIT 2008において、米Red HatのAaron Darcy氏に話を聞く機会が得られたので、同氏の話を基にサービスの概要や狙いについて紹介しよう。
今回の取り組みは、2007年11月にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をAmazon EC2で提供開始したのに続くものだ。Amazon EC2では、サーバ仮想化の技術を使い、仮想化されたサーバ・イメージ(AMI: Amazon Machine Image)を物理サーバで稼働しているハイパーバイザ上で実行している。Red Hatが提供してきたのはあらかじめ適切に構成されたAMIで、ユーザーは、必要なときに必要なだけのコンピューティング・リソースをAmazonから購入できるという状況の中でRHEL環境を利用することが可能だ。
それに対し、今回のサービスは、そのRHELの上にさらに「JBoss Enterprise Application Platform」という環境を提供するものになる。JBoss Enterprise Application Platformには「JBoss Hibernate」や「JBoss Seam」といったフレームワークも含まれており、これらをAmazon EC2を通じて時間課金体系でオンデマンドに利用できる。
Darcy氏はAmazon EC2でのJBossの利用シーンについて「長期的な利用としてはWebアプリケーションのホスティング、中期的な利用では処理能力を拡大してワークロードを移動するために、短期的には既存のサーバの処理能力が不足した際の緊急対応が考えられる」という。また、ユーザーについては、金融業界でのアプリケーション実行や、Amazonのようなオンライン小売業、アニメーションや画像のレンダリングなどの膨大な演算性能を要求する用途などが目立つという。
基本的なユーザーとして想定されているのは、既にJBossを利用してJavaアプリケーションを稼働させている企業だ。JBoss上で稼働するアプリケーショであれば、Amazon EC2のクラウドコンピューティング環境でも特別な対応は不要。「手元のアプリケーションをリモートのサーバ上で実行するというだけ」と考えることができる。必要なときだけ必要なパフォーマンスをユーティリティ・モデルで利用できるため、特に負荷の変動が激しいアプリケーションでは有効だろう。
利用を開始するのも、オンラインでの手続きだけで済む。Darcy氏は、「Amazon EC2を初めて利用する場合でも、20分もあればサーバ環境が利用可能になる。既に使っているユーザーがサーバを追加するのはもっと簡単で、数分程度でいい」という。
なお、念のため補足しておくと、Amazon EC2でクラウドコンピューティング環境を利用するうえではRed Hatの環境が必須、というわけではない。ユーザーが自力でAMIを用意することも可能である。ただし、Red HatのRHELもしくはJBossを利用することで、あらかじめ構築済みのイメージをすぐに使え、Red Hatのサービスやサポートを受けられる。特に、既にJBoss上で稼働中のアプリケーションを持つユーザーにとっては、今回のサービス開始により、オンデマンドでの処理能力拡大が極めて容易になったと言える。