IBM ビジネスコンサルティングサービスは、IBMが世界の主要企業のCEOを中心に行ったインタビューに基づく調査結果「IBM Global CEO Study 2008」を発表した。この調査は、2004年から隔年で行われており、今回が3回目となる。
今回調査を行ったのは、世界40カ国1130名のCEOに対して、そのうち日本では121名にインタビュー調査をしたという。IBM ビジネスコンサルティング サービス 常務取締役 戦略コンサルティンググループ担当 金巻 龍一氏は、結果発表の冒頭「CEOにダイレクトにインタビューするグローバル調査では、最も大きい調査である」と語った。
IBM ビジネスコンサルティング サービス 常務取締役 戦略コンサルティンググループ担当 金巻 龍一氏 |
金巻氏は、過去2回を含む3回の調査を振り返って「2004年はコスト削減は完了したが、コスト削減だけでは会社を元気にしない。成長していかないと会社も社員も元気にならない。これからは成長期回帰になる、そういう年であった。2回目の2006年は、競合から勝負になり、勝つか、それ以外のどちらかしかないということになった。そしてこのときIBMでは、イノベーションが大事であるということを発表した。そして今回の2008年では、日々変革を継続している会社とは、どういう能力を持つ会社なのかをみなさんにお聞きした」と述べた。
必要とされる変革の大きさを調査した結果では、抜本的な改革が必要と考えるCEOの割合がさらに増え、グローバルでは83%、日本のCEOに限っていえば96%に達している。この点について金巻氏は、「大きく変革するのは当たり前になりつつある。そして最近は、それをいかにスピーディにやるかが議論になっている。では、速く変革することの成功例は何かといえば、日々の変革を継続することだ」と述べた。
事業にもっとも影響を与える外部要因についての質問に対しては、「市場の急激な変化」がトップだが、その割合は回を重ねるごとに減少している。これについて同氏は「変化するのは当たり前だと考えるようになり、市場の急激な変化を脅威としてではなく、チャンスと捉えるようになってきている。他社が変化で困っているのならば、変化に強い会社になれば他社に勝てる、そういう発想になっている。したがって、変化に強い会社になるにはどうすればいいか、というが非常に大きなテーマになっている」と語った。
また同氏は新たな市場として、新興国市場の拡大と先進国の成熟化(品質にうるさいユーザー)が生まれており、それに伴い「ネットワーク顧客」という新たな顧客層が生まれていると語った。ネットワーク顧客とは、情報を豊富にもっており(場合によっては提供者側より詳しい)、ネットワークを通じて仲間と情報交換を行っているようなユーザーだ。そして、このようなユーザーを理解さえすれば、値段が高くても買ってくれる第2の富裕層として捉えるようになっているという。
また環境問題への取り組みなど、企業の社会的責任(CSR)に関しては、会社に対するコスト負担というより、全く新しいマーケットができたと捉えるようになっているという。イノベーションというのは難しいテーマだが、環境問題という世界共通の改革に取り組むと、比較的簡単なことが多く、こういったことに取り組むによって本当の意味の改革が見えてくるという声も聞かれたという。
グローバル化については、次の3つに分類できるという。
分類 | 構造 | 詳細 |
---|---|---|
International(国際企業) | 海外で作る・売る | 本社にすべての機能が集約され、海外子会社は製造・販売など事業の一部機能を担当 |
Multinational(多国籍企業) | 海外への権限移譲 | 本社に共通機能が集約され、自律度を持った海外子会社の集合体 |
Globally Integrated(グローバルインテグレーテッド・エンタープライズ) | 地球で1つの会社 | 世界中で一番ふさわしい場所にそれぞれの機能を分散させ、「適正な場所で、適正な時期に、適正な価格で」経営資源を最適化する企業 |
そして、未来企業は3つめのグローバルインテグレーテッド・エンタープライズを志向しており、それには、全世界の中でポートフォリオを管理するという考え方によって、経営環境の変化に対するリスクをヘッジしようという考え方と、世界中に優れているリソースがあるので、それを活用すればよい、という2つの考え方があるという。そして、後者の戦略として最も激しいのがM&Aで、穏やかなのが自社開発、中間に存在するのが提携だという。
グローバルインテグレーションの障害は何かという質問には、人材という答えが一番多く、これについて同氏は、「やってみてはじめて人材が育ってくる。小さい成功の積み重ねによって人材を育てる、そういうチャレンジするメカニズムをもっている企業が必然的に成長している」というCEOが多かったと述べた。