独SAPが米Oracle、米Microsoftなどと競合する上で、重要視しているのが教育だ。SAP導入には専門知識が必要で、スキルのある人材はシェアが拡大するほど需要が増える。

SAPは現在、「SAP University Alliance」として約30カ国の900校の大学/専門学校と提携し、SAPコースを導入しているが、SAPスキルは常時不足の状態だ。SAPはこれを受け、5月13日、プログラムを拡大している。

本稿では、SAPで教育担当グローバルCOOを務めるNina Simosko氏に、SAPの教育戦略について話を聞いた。

SAP America SAPエデュケーション担当グローバルCOO、Nina Y. Simosko氏(右)とSAPフィールドサービス グローバルマネジメントオフィス担当コミュニケーション長のPhillips Hofmann氏

--SAPの教育での取り組みを教えてください。

顧客やパートナー企業がSAPソフトウェアを設定/実装するにあたっての指導、それにエンドユーザーのトレーニングが教育での取り組みとなります。目的は、ユーザーによるSAPの受け入れと利用を促進し、顧客やパートナー企業のROIを確実にすることです。

新卒という意味では、SAPは5月に大学との提携を発表しました。これは、世界の大学でSAPのカリキュラムを学生に提供するもので、卒業後SAPプロフェッショナルとしてのキャリアを考えている学生や成人を対象にしたものです。

SAPはスキルや知識を測定するものとして、大規模な認定プログラムを展開しています。世界各国でマーケティングした結果、SAP認定制度の受験者は大きく増えました。SAPのスキルを身に付けたいという技術者は増加しています。

--どのようなカリキュラムがありますか?

SAPは創業時から技術者の教育に力を入れていますが、フォーカスは時代に合わせて変わっています。

以前は教室でのトレーニングのみでしたが、このところ、eラーニング、教育ソフトウェア、Webカンファレンスツール「Adobe Connect」など幅広いメディアを使って展開しています。時代に合わせて新しい技術を活用しており、最近の例としてはiPodでのプログラム配信があります。これならインターネットやサーバーに接続できなくても、必要なときに気軽に学習できます。

内容も、実務的なスキルだけではなく、コンサルティング的なコースも提供しています。たとえば、導入後にSAPの利用をモニタリングして、どの部分でSAPがよく利用されているのかを調べ、その分野に特化したトレーニングを提供する、SAPソフトウェアを導入したチェンジマネジメントをどう展開するか、などのコースもあります。

SAPの教育コンテンツの販売も開始しました。これまでのようにコースを受講するのではなく、コンテンツを購入して社内で好きなときに利用したいというパートナーや顧客企業に提供しています。

--SAPスペシャリストは不足しているのでしょうか?

そう思います。

現在、SAPコンサルタントだけで20万人以上います。SAPの知識がある人を含めると、この数はさらに増えます。

それでも、顧客やパートナー企業から"SAPスキルがある人が少ない"という声をよく聞きます。そこでわれわれもプログラムを拡大しています。どうやってSAPエコシステムを拡大するかの観点から、包括的なイニシアティブを組んでいます。

現在、先に紹介した認定制度、大学でのカリキュラムのほか、オンラインコミュニティサイトのSAP Developer Network(SDN)でもWeb 2.0的な技術を取り入れ、インタラクティブなコラボレーションやコミュニケーションを推進しています。SDNは開発者どうしが知識を共有したり、教えあう場であり、このようなスキル取得法は新しい流れだと見ています。

我々は、SAPスペシャリストやSAPコンサルタントの不足数を3万人と推測しています。今年はさまざまな取り組みを通じて、4万人の社外SAPスペシャリスト輩出を目標にしています。SAPの社員は4万人ですから、これは相当な数といえます。わが社は創業35年が経過しましたが、SAPの市場規模、SAP技術者のキャリアという意味での市場価値やチャンスがおわかりいただけると思います。