日本IBMは9日、富山市の富山国際会議場において、「IBM環境シンポジウム2008」を富山県との共催により開催した。IBMでは、同シンポジウムを2000年(東京)より開催しており、今回で9回目となる。

会場となった富山国際会議場

オープニングスピーチでは、日本IBM 代表取締役社長 兼 会長執行役員 大歳卓麻氏が「美しき 青き地球を次世代に」という今回のシンポジウムのテーマに沿って講演を行った。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書によれば、二酸化炭素の年間排出量は72億炭素トン/年と算出されているが、一方で地球が吸収する二酸化炭素の量は、約31億炭素トン/年でしかない。そこで、昨年安倍前総理は、2050年までに二酸化炭素の排出量を世界規模で半減することを提案し、日本においては、2050年までに現在より60~80%削減することを目標にした。

日本IBM 代表取締役社長 兼 会長執行役員 大歳卓麻氏

このような状況を踏まえ大歳氏は冒頭、「CO2(シーオーツー)問題は、人類全員が国をまたがって取り組まなければならない大きな課題であることは間違いない。環境技術という面では、日本が世界に貢献できる分野である。そういう意味では、産官学が一体になって取り組んでいかなければならない大きな課題だ」と述べた。

また大歳氏は、経済産業省が発表した一昨年の日本における電量消費量のうち5%はITに関するものであり、これが2025年には15~20%に拡大するというデータを挙げ、「ITについては、計算する部分よりも冷やすやめの電力消費が大きい。こういったことにいかに取り組むかが重要」と述べた。

IBMでは1971年に、当時のCEOであるThomas Watson氏によって環境ポリシーを制定、公害防止、天然資源保護、地球環境問題における情報開示等に取り組んできた。情報開示については、事故のデータは宝であるとの考えに基づき、世界共通の環境事故報告システム(EIRS)を導入、化学物質の流失事故や法律違反などを報告している。これにより、全世界すべての事業場において起こった年度ごとの事故がわかり、その原因、対策が参照できるという。また、このシステムには発生後、一週間以内に登録することが義務づけられているという。

現在のIBMの環境ポリシー(要約)

そして今年、IBMは低炭素社会に向け、次の3つを強力に推進するという。 1つ目はIBM自身が低炭素企業になること、2つ目はユーザーの低炭素生産性の向上を支援すること、そして3つ目は社会全体が低炭素化に貢献することだ。

低炭素社会に向けたIBMの取り組み

IBM自身が低炭素企業になることについては、全世界のIBMでおいて2012年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で68%減らすことを目標に取り組むことを発表した。また、社内では社員の半数が参加しているというECOマラソンを実施している。これは、社員自身が自分が行うエコ活動を宣言。その実施状況を毎月チェックし、グラフで表示するというものだ。

IBMでは2012年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で68%減らすことを目標とした

エコマラソンに参加する社員は、「マイカップを使います」「帰宅時、消灯を徹底します」など、自分が行う活動を宣言する

エコマラソンの参加者は実施状況を毎月申告する

エコマラソンの申告した実績によりポイントが与えられ、優秀者は表彰される

ユーザーの低炭素生産性向上支援では、生産計画サイクルの週次化、サプライチェーン全体でのコスト情報の可視化、グローバル最適化サプライヤの選定と調達集約で、コストを30%、納期を5日短縮させることを提案している。

社会全体への取り組みでは、ノキアやソニーと「エコ・パテントコモンズ」を設立し、環境保護に貢献する特許を無償で公開する運動を展開していることや、世界有識者会議などを通しての環境問題を議論、環境教育資材として、インターネット上での3Dシュミレーションゲームの提供などを挙げた。

エコ・パテントコモンズの取り組み

エコ・パテントコモンズの例

また、IBMではグリッド技術を使って、ゲノムと疾病の研究、HIVやAIDSのほかSARSなどの伝染病の研究、自然災害や飢餓など、人道支援に取り組んでいる。これは、ワールド・コミュニティー・グリッド(WCG)と呼ばれるもので、この運動に賛同し登録すると、登録されたPCがアイドリング状態になるとWCGサーバからデータが送られ、計算処理を行い、結果をサーバに送信し、これらを上記の人道支援の研究に役立てようというものだ。すでに、45の天然痘の潜在的治療法を発見するなど大きな効果を挙げている。

ワールド・コミュニティー・グリッド