EU競争政策担当委員のNeelie Kroes氏 |
欧州の企業と政府によるオープンソースソフトウェアの推進団体、OpenForum Europeは6月10日(現地時間)、ベルギー・ブリュッセルでオープン標準をテーマとしたセミナーを開催した。ここでEU競争政策担当委員のNeelie Kroes氏がスピーチを行い、欧州連合(EU)の加盟国、市民、企業にオープンな技術を利用するよう呼びかけた。
Kroes氏は、オープン標準についての欧州委員会(EC)の見解について講演した。社名は挙げないまでも、"プロプライエタリ"として同氏が現職に就任以来続いている米Microsoftと暗に比較ながら、ECとしてはオープンソースを推進するというものとなった。Kroes氏は「2度も罰金を命じたことはかつてなかった」などとして、欧州委員会(EC)が技術における公正な競争の徹底に真剣に取り組んでいる姿勢を強調した。
Kroes氏はまず、「オープンな標準技術は相互運用性の土台」とし、オープン標準技術の重要性を確認した。Kroes氏は、市場が決定するという原理を信じているとしながらも、「介入が必要なこともある」と続ける。
「市場の発展により、特定のプロプライエタリ技術がデファクト標準となった場合、その技術の所有者は市場に対して巨大な力を持つ。顧客を囲い込み、競合他社を排除できる」とKroes氏。そして、「技術の所有者が力を悪用する場合、規制当局は介入しなければならない」(Kroes氏)
Kroes氏は、「購入者は技術を購入するとき、賢明にならなければならない」と述べ、ECはこれを保護するために、将来のIT開発/投資ステップで、オープン標準を土台とし、ドキュメントがきちんとした製品の利用をECとして奨励する、という昨年決定した方針を再度強調した。そして、ミュンヘン市や仏警察など、オープンソースを採用した政府に賞賛の意を示した。
EUとMicrosoftは10年もの間、すれ違いが続いているが、Kroes氏はその中心的人物。サーバの互換性とメディアプレイヤーが争点となった件では、2004年にEU独占禁止法違反を下した後も、是正措置の遵守状況を厳しく監視した。2007年秋、Microsoftは上訴を取り下げ、EU側に全面遵守するとしてピリオドを打った。
だが、EUは今年1月、Webブラウザに関する相互運用性について新たな独禁法違反調査を開始した。また、先にISO(国際標準化機構)標準として承認されたMicrosoftのドキュメントフォーマット「OOXML(Office Open XML)」についても、標準化までのプロセスを調査しているところだ。
Kroes氏はこれについて、「オープンな代替技術がある場合、市民や企業は政府の情報にアクセスするために、政府が採用している特定技術の利用を強いられるべきではない」と述べている。
最後に「オープン標準を選ぶことが、非常に賢明なビジネス決断なのだ」と述べ、スピーチを終えた。