ヤフーは10日、同社の公開する「Yahoo! ウィジェット」において新たに「ワンセグウィジェット」の提供を開始、同サービスについての発表会を行った。ワンセグ放送とインターネットの連動により、新たな検索・コミュニケーションの方向性を探るという、現段階では実験的といえるサービスだ。

ワンセグ×ネットでテレビの新しい楽しみ方を提案"

今回発表されたワンセグウィジェットは、パソコン用のワンセグチューナーとYahoo! JAPANが提供するサービスをウィジェットを介して連携させ、テレビを見ながら番組内容や出演者に関する情報を検索したり、同じ番組を見ているユーザー同士でチャットをしたりするなどの使い方を提案するものだ。

Yahoo! JAPAN 事業推進本部デジタルホーム事業室長 坂東浩之氏

はじめに同社事業推進本部デジタルホーム事業室長である坂東浩之氏より、サービスの概要が説明された。現在、同社が掲げる「Yahoo! Everywhere構想」に基づき、Yahoo!自身が積極的にサービスをつなげることで利用者のタッチポイントを拡大するという動きが進められている。パソコン・携帯電話がメインとなっているネット利用時間を、接触するデバイスを増やすことでより拡大していくことがその狙いだ。

「Yahoo! Everywhere構想」では、ネット利用時間の拡大が命題となっている

接触時間の長いテレビにおいて、異なる方向からネット利用時間拡大を狙う

すでにリリースされている「Yahoo! JAPAN for AQUOS」がパソコン・携帯電話以外のデバイスに利用環境を広げるという考え方であるのに対し、今回発表されたワンセグウィジェットは、テレビを見ている時間帯にパソコンでYahoo!を使ってもらうという考え方が開発の発端となっているという。

坂東氏は、10代から40代まで幅広い世代が高い確率でテレビを見ながらインターネットや携帯メールを利用しているという調査結果や、Yahoo!検索ランキングの急上昇ワードにテレビ番組に関連した言葉がかなりの頻度で上位に出てくることなどを挙げ、「検索や携帯メールによるコミュニケーションが、放送を見ている最中に行われていることが考えられる」と述べた。

特に10代・20代女性では9割近くが「ながら視聴」を行っている(出典:NTTアド「情報・メディア接触の実態調査」2007年)

ブログで語られるキーワードにもテレビ番組に関連した言葉が多く登場している

これらのことから、テレビ番組と連動した"観ながら検索""観ながらコミュニケーション"という部分に新たなネット利用の市場を見いだしたのが、今回発表されたワンセグウィジェットというわけだ。

ウィジェットを介して、番組内容から興味・関心事項へ直結

Yahoo! JAPAN 事業推進本部デジタルホーム事業室企画リーダー 川瀬達也氏

続いて、同社デジタルホーム事業室企画リーダー 川瀬達也氏より、同サービスのデモを通じた各機能の紹介が行われた。同サービスは、アイ・オー・データ機器、バッファロー、ピクセラの3社が提供するパソコン用ワンセグチューナーと連動して動作する。ワンセグウィジェットを起動すると、視聴中の番組が配信している番組情報のテキストデータをチューナー側から読み取り、形態素解析により人名・地名などのキーワードを抽出する。

デモ画面。ウィジェットを介してWeb検索、画像検索やメッセンジャーと連携する

チューナーでチャンネルを選択すると放送中の番組名での検索結果が表示される他、抽出されたキーワードをクリックすることでWeb検索、知恵袋、画像検索、地図検索が利用できる。なお、キーワードが人名の場合はデフォルトで画像検索が、地名の場合は地図検索が表示されるようになっている。検索結果はウィジェット画面の下部に表示され、クリックするとWebブラウザが起動してリンク先のページを閲覧できるようになっている。任意入力による検索ももちろん可能だ。

ワンセグウィジェットの各機能説明。Bの部分に受信したテキストデータが表示される

メッセンジャーとの連携。いわゆる"実況板"に対抗なるか? または棲み分けできるか?

また、「チャット」のボタンをクリックするとYahoo!メッセンジャーが起動し、視聴中の放送局ごとにチャットルームが自動的に表示される。スポーツ番組などでは「パブリックビューイングのような楽しみ方ができるのでは」(同氏)という。

このようにテレビとWebサービスをワンセグウィジェットでつなぐことで、検索を通じた発見や新しいコミュニケーションを提供すのが同サービスの狙いとなっている。ただし、現段階でワンセグウィジェットが自動的に検索対象とするのは放送局が提供している番組情報のテキストデータのみ。画面上でどれだけの検索情報を提供できるかは放送局次第という面もある。

テレビとネットの連動、今後の展開は"使われ方"がカギ?

このウィジェットで画像/地図検索が提供されるのはともかく、なぜYahoo!知恵袋が検索対象となったのだろうか。川瀬氏によるとYahoo!知恵袋において「番組の内容について質問が投稿され、ほぼリアルタイムでその解説が書き込まれる」事例が多く見られているのだという。提供側が考えてもいなかった使われ方で、サービスがテレビと連動する現象が起きていると言える。

ワンセグウィジェット自体も「テレビ視聴とWebサービスの関連についての仮説をもとに作った」(坂東氏)サービスであり、提供側の意図どおりに利用されるかは未知数だ。現在のサービス提供形態は、ハード的にもソフト的にも利用の敷居が低いとは決して言えないが、コンセプト自体は携帯電話やデジタルテレビなどより利用者の多いデバイスへも可能性を持つだろう。この点について坂東氏は「ある程度(利用者の)反応を見て進めたい」と述べている。

動作環境について

デモ機の動作画面