米エネルギー省(Department of Energy: DoE)は9日(現地時間)、同省の国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration: NNSA)が利用しているスーパーコンピュータ「Roadrunner」がペタフロップ級のパフォーマンスを初めて達成し、世界最高速のコンピュータになったと発表した。設計は米IBMが担当し、米ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所へと納入される。総コストは約1億ドルで、AMD OpteronやCell BEを組み合わせて1PFLOPSのパフォーマンスを達成した。
ロスアラモス国立研究所のRoadrunner |
Roadrunner(ミチバシリ)はニューメキシコ州の州鳥となっているシンボル的な存在。このニックネームを介したスーパーコンピュータは、6,948個のデュアルコアOpteronと1万2,960個のCell BEを組み合わせたハイブリッド構造となっている。ブレードサーバのBladeCeterなど、基本的にはIBMが市販している製品を組み合わせたシステムで、6000平方フィート(約557平方メートル)の敷地内に288個の冷蔵庫サイズのサーバラックがひしめき合い、互いに1万の内部コネクションで接続されている。システム全体のメモリ容量は80TBに達するという。総消費電力は3.9メガワットで、1ワットあたりの計算能力は3億7600万回。2009年6月に発表される最も電力効率の高いスーパーコンピュータを決めるランキング「Green 500」の上位に登場することが見込まれる。
現在、世界最速のスーパーコンピュータランキング「Top500 List」では、同社がローレンスリバモア国立研究所に納入したBlue Gene/Lが478.2TFLOPSのスコアで2位以下を3倍以上引き離してトップに君臨している。一方でRoadrunnerがさらに倍にあたる1PFLOPSの壁を越えたことで、今後もTop500 List上位をIBMが独占する可能性が高まってきた。
なおDoEによれば、Roadrunnerは地下核実験なしでの貯蔵核兵器のシミュレーションなどを実践するのに役立つという。米国では1992年以降、地下核実験が禁止されており、現在は貯蔵兵器の寿命を延ばすための理論ベースでの研究や開発に限定されている事情がある。新たな核兵器の開発は冷戦終了とともに停止しており、すでに現行の貯蔵兵器は30-40年クラスの老朽化が進んでいる。