Wolfson Microelectronicsは9日、オーディオデバイス「WM8903」を発表した。同製品は、同社が新たに開発した複数のテクノロジプラットフォームを搭載することで、低消費電力と高音質再生の両立を実現している。すでにサンプル出荷を開始しており、2008年第4四半期からの量産を予定している。単価は1万個受注時で1.8ドル。

同製品に搭載されている主なテクノロジープラットフォームは「SmartDAC」「クラスWアンプ・テクノロジ」「SilentSwitch」の3つ。

「WM8903」に搭載されている主なテクノロジープラットフォーム

SmartDACは、同社独自のDACキャパシタ用スイッチアーキテクチャで、従来のDAC(D/Aコンバータ)と異なり、設計者が消費電力とオーディオ特性のバランスをプログラミングできる機能を搭載。このため、消費電力と音質を細かく制御することが可能となり、厳しい消費電力条件も満たすことが可能となる。

また、高PSRR(電源電圧変動除去比)により、ノイズの多いスイッチモード電源による電力供給時においても音質劣化を発生させないという特長を持つ。

クラスWアンプ・テクノロジは、クラスG/Hアンプ・テクノロジを進化させたもので、DCサーボアーキテクチャと併用して用いられる。音楽再生時に、音楽ソースの信号レベルに追従する適応型デュアルドライブ用チャージポンプを搭載することで、アンプの消費電力を自動的に予測、最適化することが可能となっている。

SilentSwitchは、クランプおよびシーケンサテクノロジの採用により、ポップ音/クリック音の抑制機能を強化している。クランプ回路は、電源オン/オフ時のヘッドフォン・アンプ出力段の不要ノイズを減少し、電源オン時のヘッドフォン出力をアースする。

また、シーケンサテクノロジは、電源オン/オフ時のポップ音/クリック音抑制機能を向上させるもの。レジスタ書き込みシーケンサが一体化されており、遅延時間をプログラミングできる制御シーケンサの働きにより、オーディオのパス設定をプリロードおよび、実行することが可能となる。このため、一般的なポップ音/クリック音の低減を実現することができ、再生音質を向上させることができるようになる。

さらに、同シーケンサを使用することにより、ソフトウェアドライバの開発時間の短縮が可能となり、セット製品の市場投入期間の迅速化ができるようになるとしている。

このほか、録音モード時においては、ダイナミック・レンジ・コントローラ(DRC)が作動することにより、録音時の音質最適化を実現している。クイックリリースタイプのインパルスノイズフィルタの作動により、大きなインパルス性ノイズのある環境においても、録音サウンドの明瞭度の向上を実現している。また、突発的な不要ノイズと録音ソースの信号レベル上昇の違いを判別することが可能である。

Wolfson Microelectronics リージョナルマーケティングマネージャー Yan Goh氏

同社 リージョナルマーケティングマネージャーのYan Goh氏は、「こうしたアーキテクチャ、特に独自のクラスWアンプ・テクノロジおよびSmartDAC技術の採用により、オーディオ特性を犠牲にすることなく、音楽再生時の消費電力を低減することが可能となった。IEC60268規格に基づくテスト信号を用いた場合、チャネル当たりの負荷電力が0.1mWの時、MW8903のヘッドフォンアンプの電力消費量は、ClassA/Bと比較して50%以上減となる4mW以下を実現する」と語る。

IEC60268テスト信号を用いた場合の電力消費量

なお、同社では、同製品を用いることで、携帯メディアプレーヤやマルチメディア携帯電話機などはバッテリ寿命を向上させることができるとしており、OEMやODMメーカー向けを中心に、これらのアプリケーションへの適用を進めて行きたいとしている。

WM8903を搭載したデモボード(MW8903は基板中央部に配置)