富士通は5日、ネットワークサービス管理ソフトウェア群「Proactnes II V01」の販売を開始すると発表した。同製品の特徴は、利用者が体感する音声/映像品質(Quality of Experience: 体感品質)という観点からネットワークの監視が行える点。ネットワーク中のデータ劣化を検知するだけではわからなかった、電話音声の聞こえやすさや、映像の見えやすさに影響する問題をリアルタイムに"見える化"することができる。

トラフィック監視ではネットワークの品質を測れない

富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 事業部長、野村豊夫氏

富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 事業部長の野村豊夫氏は、ネットワーク管理業務の現状について次のように語る。

「通信技術が高度化した昨今のネットワーク上では、音声通信、映像通信、画像通信、データ通信など、多種多様な形態の通信が行われており、品質要件の異なるデータが混在して流れている。その結果、トラフィックを見ただけでは、エンドユーザーの体感品質がわかりづらくなっているというの実情だ」

Proactnes II V01は、そのような問題を抱える従来のネットワーク監視システムに対して「体感品質をアドオンできる」(富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 プロジェクト部長 水田一生氏)点が大きな特徴だという。

Proactnes II QM - ユーザーの体感品質を測定

Proactnes II V01ソフトウェア群は以下の4製品によって構成される。

  • Proactnes II QM ネットワーク故障検知ソフトウェア V01
  • Proactnes II QM 音声品質管理ソフトウェア V01
  • Proactnes II QM トラフィック測定ソフトウェア V01
  • Proactnes II NM 大規模ネットワーク監視ソフトウェア V01

これらのうち、上から3つの「Proactnes II QM」シリーズが体感品質を検知するためのものになる。

Proactnes II V01のソフトウェア体系

Proactnes II QM ネットワーク故障検知ソフトウェア V01

富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 プロジェクト課長 藤中紀孝氏

「Proactnes II QM ネットワーク故障検知ソフトウェア V01」は、ネットワーク上に存在する問題をリアルタイムに検知することができる。従来のソフトウェアでも対応されていた「回線遅延」はもちろん、「体感遅延」についても検知が可能だ。

例えば、一般的なネットワークでは、「パケットロスが1%生じただけでも通信速度が半減してWebサイト閲覧時の反応が鈍くなり、6%になると動画がほぼ静止画になってしまう」(富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 プロジェクト課長 藤中紀孝氏)が、従来のソフトウェアではこうした状況を検知するのが難しかったという。また、検知できたとしても、「早くて5分~1時間。場合によっては1日を要するというケースもあった」(水田氏)が、ネットワーク上の全データのヘッダだけを収集するという独自技術により、リアルタイムに体感速度の遅延を検知できるようになった。

Proactnes II QM 音声品質管理ソフトウェア V01

「Proactnes II QM 音声品質管理ソフトウェア V01」は、IP電話等の音声通話において、ユーザーの聞こえやすさを監視する製品だ。送信信号と受信信号を比較することで、「これまでは検知が難しかった"雑音環境下のエコー"を98.9%の精度で検出することができる」(野村氏)という。

監視は数千通話に対して同時に行うことができ、エコーが発生すると管理画面上で対象の回線が赤色表示される。

Proactnes II QM トラフィック測定ソフトウェア V01

富士通 ネットワーク管理ソリューション事業部 プロジェクト部長 水田一生氏

「Proactnes II QM トラフィック測定ソフトウェア V01」は、トラフィック情報を収集するためのソフトウェア。ネットワーク設計時の情報と収集データを比較しながら監視を行う。収集負荷をバランシングでき、信頼性の高いデータが得られるのが特徴。

「従来の測定製品は、スイッチ類にトラフィック情報を"聞きに行き"、それをマネージャでまとめるという形式をとっていたため、ネットワーク機器の負荷が高いときはパフォーマンス情報を取得できないこともあった。しかし、この製品では、専用のモニタリングサーバによって"監視する"ため、信頼度の高いデータ収集が可能なうえ、ネットワーク機器の負荷を減らすこともできる」(水田氏)

Proactnes II NM - 異種ネットワークの統合監視が可能

一方、Proactnes II NMシリーズは、ネットワークの運用管理を目的としたもの。今回発表された「Proactnes II 大規模ネットワーク監視ソフトウェア V01」は、Proactnes II QMから報告された情報を受け取り、問題個所を物理構成マップ上で表示する。前述のとおり、Proactnes II QMの情報は、体感品質レベルの詳細なものであるため、障害だけでなく、ネットワーク上のボトルネックも発見することができ、予防保全やネットワークの拡張時にも重宝するという。

また、同製品は、その名のとおり大規模ネットワークに対応しており、数十万のネットワーク装置の監視が可能だ。アクセス網ごとにProactnes II NMを設置し、それらをもう一台のProactnes II NMで統合監視するという使い方もできる。こうした構成をとれば、「固定ネットワーク、移動ネットワーク、仮想ネットワークなどが混在する環境においても、統一感のある操作で監視が行える」(水田氏)という。

販売価格/出荷時期

Proactnes II V01シリーズの最低構成価格は、「Proactnes II QM ネットワーク故障検知ソフトウェア V01」が282万円、「Proactnes II QM トラフィック測定ソフトウェア V01」が130万円、「Proactnes II NM 大規模ネットワーク監視ソフトウェア V01」が300万円。いずれも本日より販売が開始され、今月30日に出荷が開始される。

なお、「Proactnes II QM 音声品質管理ソフトウェア V01」については、2008年第3四半期での販売開始が予定されており、価格も同時期にWebサイトにて公開される。

会見ではProactnes II V01を使ったデモも披露された。1つ目のデモは、3回線に動画を同時配信している中(写真左)で、1回線(中央の端末)だけ擬似的に品質劣化を増大させた。1%ではそれほど違いはみられなかったが、2%の段階で画面がときおり停止し始め、6%ではコマ送り状態に。管理画面(写真右)では、品質劣化させてすぐにアラートが表示された

2つ目のデモは、音声通話に関するもの。写真左の電話機とPCが擬似的に音声通話をしている。この回線に対してエコーを発生させると、監視画面上の該当回線が赤く表示された(写真右)。なお、これらのデモは、11日より開催される「Interop Tokyo 2008」でも披露される