6月1日の夜明け頃、韓国の保守政党で、イ・ミョンバク現大統領政権の与党でもある「ハンナラ党」のWebサイトがハッキングされた。
「猫ハッカー」はベテランプログラマー
ハッキング後のWebサイトの掲示板には、管理者の名義で、大統領を批判・卑下する内容の文章と猫の写真などが、数回に渡って掲載されていた。そのためハッカーは「猫ハッカー」と呼ばれるようになった。
数時間後、ハンナラ党サイトはシャットダウンされ、復旧中である旨を知らせる文句が、長時間掲載されることとなった。
突如起こった出来事にインターネット上は一時騒然となったが、ハッキングから2日後の3日、警察庁 サイバーテロ対応センター(以下、センター)は猫ハッカーを検挙したと発表した。
センターによると猫ハッカーの正体は、37歳の男性プログラマーだったという。米国留学の経験があり、プログラマー歴も8年というベテランだ。センターではこの容疑者がハッキングを行った理由として「国民が(米国からの)牛肉輸入に反対しているのにも関わらず、それを強行しようとする政府方針に対して不満を持った」と説明している。攻撃対象をハンナラ党サイトに決めた後、犯人はインターネットの検索などでハンナラ党サイトのぜい弱点を調べ上げ、ハッキングツールなどを入手。Webサイト管理者の権限を奪い、犯行に及んだようだ。
センターによると「最近、政府政策に不満を持っての、ハッキングを始めとしたサイバーテロ犯罪が拡散している現状に対し、深く憂慮している」と述べ、公共機関などにセキュリティ強化を促している。
機動隊、マクドナルドサイトも被害
米国からの骨付き牛肉輸入問題で揺れる韓国。これに大反対する国民は、連日大規模デモを展開しているほか、牛肉問題と何らかの関係がある特定サイトのサイバー攻撃も頻発するなど、社会的に混乱をきたしている。
サイバー攻撃の対象となっているWebサイトはハンナラ党だけではない。大規模デモの鎮圧にあたった、ソウル地方警察庁 第1機動隊のWebサイトもハッキングされ、逃げの姿勢の白熊の写真とともに「た・・・たたいたら、い・・・痛いよ!」というメッセージが掲載された。興奮で抑えのきかないデモ隊を、機動隊側がやむなく叩くなどして抑えたことに対する抗議行動と言える。
さらに韓国マクドナルドのWebサイトもハッキングされ、ここに接続するとわいせつなWebサイトにつながるように変えられていた。米国企業であり、牛肉商品を扱う代表格のようなマクドナルドに対する抗議行動と思われる。
牛肉輸入問題は、オン・オフラインで大きな波紋を投げかけている。政府では米国産牛肉の輸入衛生条件の告示を延期すると発表するなど、国民の反応を見ての対策を発表しているものの、まだまだ先が見えない今、国民の不安はぬぐいきれたわけではなく、引き続き混乱状態にあると言える。