セカンドライフの創始者であるリンデンラボのフィリップ・ローズデール会長が初めて来日し、5月30日、東京・新川の内田洋行新川オフィス内の東京 ユビキタス協創広場CANVASで開かれたラウンドテーブルに参加した。
ラウンドテーブルには、セカンドライフで事業を行っている企業や政府、大学、アーティストが参加。セカンドライフを取り巻く、日本の産官学の関係者が一堂に介し、それぞれの立場の取り組みを紹介するとともに、ローズデール氏との意見交換を行った。
あいさつに立ったフィリップ・ローズデール会長は、「来日した時には、日本でなにが起きているかわからなかったが、大きな動きになっていることを感じた。すでに多くの人にセカンドライフに参加していただいており、日本の1カ月の利用者数は、米国、ドイツ、英国に次いで4番目。また、世界的に見ても、利用時間が長いのが日本のユーザーの特徴である。日本のコミュニティに対してサポートすることの重要性を感じた。日本のユーザーの声を反映して、積極的にサポートしていきたい」とした。また、「優先順位は、パフォーマンスが高く、安定的に稼働するシステムの構築、そして、使いやすいインタフェースの確立となる。さらに、日本のユーザーの利便性が高まるように、電話や電子メールでサポートを受け付ることができるように、人材を確保したい」などと述べた。
ラウンドテーブルに参加したのは、セカンドライフ内でTokyo ZERO番地を運営するSUNの奥井宏太朗社長、セカンドライフのブログポータル「ソラマメ」を運営するメタバーズの島谷直芳代表取締役、内閣府参事官の鳥巣英司氏、アーティストのはたけ氏、慶應義塾大学理工学部生命情報学科専任講師の牛場潤一氏、日本テレビ技術統括局技術戦略センター技術開発部の安藤聖泰氏、セカンドライフ内で土地事業などを展開するマグスルの新谷卓也代表取締役。
鳥巣氏は、災害予防、国際防災協力を担当しており、「災害時にどういった行動をとるべきかは大変重要なものといえる。その判断力を養うという点で、セカンドライフのような仮想社会の場で、シミュレーション体験ができることは有意義。また、依然として紙芝居を使った災害予防に対する啓蒙活動が行われおり、これと同様の効果を発揮するものとしてセカンドライフには注目している」などとした。
アーティストのはたけさんは、自身がセカンドライフにおいて展開している音楽活動について説明。「リアルの世界ではバンドを組んで演奏したことがない人が、セカンドライフの世界では、人気バンドとして活動するといったことが起こっている」などと語った。
ラウンドテーブルの参加者の中からは、「デフォルトで提供されているアバターを、もっときれいなものにしてほしい」「もっと自由度や柔軟性を持たせてほしい」「外部とも連携しやすいようにAPIを増やしてもらいたい」といった声が、ローズデール会長に寄せられた。これに対して、「日本のユーザーの特性や要求を理解することができた。アバターの強化などのほか、シミュレータの改良などによって、セカンドライフを防災教育にも生かせるようにしていきたい。帰国したら取り組みたい」とコメント。日本のユーザーのセカンドライフ活用を視野に入れた機能強化を進めていく姿勢を示し、「今後は、日本のユーザーをもっと増やしたい」と語った。
セカンドライフを運営するリンデンラボは、米リアルネットワークスのCTOを務めていたローズデール氏が1999年に設立。現在、セカンドライフは、全世界で100カ国以上、1,400万人のユーザーが利用している。
なお、今回、会場を提供した内田洋行は、ラウンドテーブルそのものには参加しなかったものの、今年5月から教育分野におけるセカンドライフ利用の実証実験を開始。セカンドライフ内のUCHIDA EDUCATION島の一部区画を、教育関係者および研究者のためのバーチャルな研究区画として提供し、共同研究や交流を行っている。