インテルは5月30日、「インテル プラットフォーム技術セミナー 2008」を開催した。テーマとして掲げられたのは「グリーンITに対するインテルの提言 - 第2弾 マルチコア時代のインテル・プラットフォームと、並列ソフトウェア技術」だ。このタイトルだけからも、Intelがマルチコア化を省電力/グリーンIT実現のための重要な技術要素と位置づけていることと、マルチコア・プロセッサの市場性を確保するためにもソフトウェアの並列化の推進が鍵になると認識していることが明らかになっている。
まず挨拶を行なったインテルの代表取締役共同社長の吉田和正氏は、"Eco-friendly technology starts here."(環境に優しい技術がここから始まる)というIntelの最新メッセージを示しつつ、Intelが今後も性能とエコロジーを両立させていくこと、プロセッサのコア数は現在製品化されている4コアからさらに6コア、8コアと増加していくこと、その際にソフトウェア・イノベーションが重要になると認識していること、などを簡潔に語った。
続いて「ペタスケールからミリワットまで インテル・アーキテクチャーによる革新とマルチコアの効率的な利用のための取り組み」と題し、米Intelの上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパトリック・ゲルシンガー博士が基調講演を行なった。
同氏は、ムーアの法則やアンディ・グローブ氏の発言、メトカーフの法則などを列挙した上でプラットフォームの拡大がユーザーに与える価値がいかに大きなものになるかを示し、幅広く利用されているIAアーキテクチャの価値を「ペタスケールからミリワットまで」という表現で強調した。
この言葉を裏付けるように同氏は、HPC、エンタープライズ・サーバ、PCクライアント、モバイル・デバイスや組込機器といった広範な分野に対してIntelがどのような取り組みを行なっているかを最新の製品や技術の紹介を織り交ぜながら紹介していった。
講演後、同氏は会場からの質問を受け付けた。そこで出された質問に、今後も技術革新を継続できるのかという趣旨の質問があった。現在もムーアの法則に従ってプロセスの微細化が進行しているが、すでに広く認識されているとおり、微細化には原子のサイズという物理的な限界があり、無限に微細化を進められるわけではない。現時点もすでに限界が視界に入ってきている状況だといえる。
こうした指摘に対して同氏は、「技術革新は、視界が100mしか効かない濃霧の中を進むようなものだ」と語った。同氏は「ムーアの法則は、どの時点においても、おおよそそこから10年先までの予測を提供していた」という。10年先までは予測できているが、そこから先は濃霧に包まれたように全く見えていないというわけだ。
しかし、視界が100mしか効かない濃霧の中でも、50m進めば、そこからさらに100m先まで視界が広がり、以前は見えなかった部分も見えるようになっていく。同様に、現時点では10年先までおおよそ予測できているが、5年後にはそこからさらに10年先までが予測可能になっているはずだというのだ。
同氏は基本的に技術革新に関しては楽観的なスタンスであり、原子サイズという物理的な限界があるのは間違いないが、何らかの技術革新によって性能向上を継続する方向が見い出されるはずだという。
Intelの研究開発の現場がこうした楽観主義を維持できているのであれば、少なくともあと10年はプロセッサの性能向上がこれまで通りに進行していくことを疑う理由はなさそうだ。