湘南ビーチFMなど全国のコミュニティFM19局は27日、コミュニティFMの連合組織「コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス」を6月2日に結成すると発表した。アライアンス結成に伴い、現在3局のラジオ放送をインターネットで配信している「サイマルラジオ(SimulRadio)」のWebサイトを同日にリニューアル、より多くの放送が聞けるようになる。
著作物使用料などについての合意が成立、全国から参加の意思続々
コミュニティFMは地域密着型のラジオ放送局だが、出力電波が弱いため視聴できない地域もある。こうした地域への放送を補完するため、元NHKキャスターの木村太郎氏が社長を務める湘南ビーチFM(逗子・葉山コミュニティ放送)が1996年、日本で初めてラジオのインターネット配信を開始した。
だが、ラジオ放送のネット配信においては音楽著作権の問題があり、これを解決するため、2003年から日本音楽著作権協会(JASRAC)との勉強会を開始。実証実験などを経て、湘南ビーチFM、フラワーラジオ、三角山放送局の3局がサイマルラジオのサービスを先行開始した。
さらに今年4月、著作物使用料などについての合意が成立。これをきっかけに、全国のコミュニティ放送局から参加の意思が表明され、コミュニティFM19局による連合組織「コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス」の結成につながった。
フリービットがパッケージを提供、コールセンターでサポート
アライアンスの結成に伴い正式提供が開始されるサイマルラジオには、大学時代から木村氏の事業に関わってきた石田宏樹氏が社長兼CEOを務めるIT企業フリービットが「デジタル放送パッケージ for SimulRadio」を提供。
同パッケージは、インターネット接続、エンコーダPC、ストリーミングサーバを一体で提供、同一プラットフォーム上で複数のラジオ局の放送の配信を行うことができるようになっている。また、佐賀県唐津市にあるコールセンターを通じ、トラブルの際などのサポートも行う。
新しいメディアと認識、数多くのビジネスチャンスも
発足を前に開かれた記者会見では、木村氏、石田氏のほか、JASRAC常務理事の菅原瑞夫氏が出席。木村氏はサイマルラジオに関し、「ラジオ放送の単なる補完という役割ではなく、新しいメディアと位置づけている。全てデジタルで流通するので音質が極めてよく、PCだけでなく、携帯やWiMAXなど他の出口も数多く考えられる。ログがとれるという利点もあり、新たなビジネスチャンスが生まれると確信している」と述べた。
また石田氏は、「各FM局で80秒のCMを1日2本放送し、電話で反響があった分だけ広告費をいただく通話報酬型で利益を得るというビジネスモデルにより、通常ならシステム利用料として各FM局から月額7万円いただく必要があるのを、月額5,000円と安価な価格で提供できるようにした。万一トラブルがあっても、コールセンターから遠隔操作で画面を復旧できるため、危機管理の面でも十分サポートできる」と話した。
サイマルラジオホームページのリニューアルは6月2日で、同日に視聴できるのはすでに先行開始している湘南ビーチFMなど3局。6月中旬から残りの局が順次サービス提供を開始する。木村氏は今後について、「年内には現在の倍にあたる40局前後のコミュニティFM局が参加する見込みで、いずれは100局を超えるのではないか」と話している。