通信会社大手のHanaro Telecom(以下、Hanaro)において、大規模な個人情報流出事故が発生し、個人情報流出事件が相次ぐ韓国に不安を広げたことは、以前本サイトでお伝えしたとおりだ。ここでは同社社員が、約600万人分の自社顧客情報を外部のテレマーケティング業者に渡し、提携会社のクレジットカード会員誘致や自社商品勧誘などに利用していたことが明らかになっている。

その後、市民団体などが先頭に立ってHanaroを集団訴訟する動きがインターネット上で広まっているほか、事態を重く見た韓国政府の放送通信委員会が、Hanaroの法令順守状況について実態調査を実施するといった動きがあった。同委員会では、KTやLG Powercomなど、通信他社に関しても同様の調査を行う方針である意思を明らかにしている。一方、当事者であるHanaroは、テレマーケティングを一時中止すると宣言した。

こうした動きに合わせるように、Hanaroと同業のKTでは個人情報保護対策を強化すると発表した。

これによるとテレマーケティングは「当分の間」(KT)中断されることになる。同社によるとこれまでは、全国700以上の委託先にテレマーケティングを依頼しており、各委託先で自律的な営業活動が行われていたのだという。しかしこうした方針は今後改善され、KTから顧客情報保護認証を受けた委託先のみがテレマーケティングを行える体制作りを、実施していく予定だ。

Hanaroの個人情報流出事件は内部の社員によるものだったが、KTでは内部犯対策も強化した。社内システムのセキュリティレベルを強化するのはもちろん、顧客情報を出力・ダウンロードする際には、上司から承認を受けることを義務化するほか、そのプロセスの履歴も徹底的して管理する。

韓国では通信会社間の競争が激しく、テレマーケティングによる自社製品のPR合戦を繰り広げている。ただ、こうしたマーケティングは韓国においては以前から行われている常套手段だ。個人方法の無断利用事件は通信業界に限ったものではないし、本件が最初ではない。

しかしHanaro事件は、時期が時期だけに社会に与えたインパクトは大きかった。ちょうど、1,000万人以上の個人情報がハッキングにより流出した「Auction」事件が起こり、韓国国民が個人情報流出に敏感になっている時と重なるようにして起こったからだ。危機感を感じているのは国民だけではない。政府も同様で、行政安全部は積極的に対応する姿勢を見せている。

同部では5月中旬に、デパートや大型スーパー、旅行業者など、オン/オフラインで大量の会員情報を扱っている業者に対し、情報保護レベルを強化する対策を用意した。個人情報取り扱いの実態についての点検を強化するほか、個人情報保護基準を設けるための法制度の整備、個人情報が侵害された場合の権利救済措置の活性化などを実施するという。

次々と個人情報保護の強化対策が発表されてはいるものの、韓国国民の不安感や不信感が完全に収まったわけではない。Hanaroを始めとした業者は、今後の信頼回復にこれまで以上の努力が必要となりそうだ。