半導体ベンダである蘭NXP Semiconductorsは、同社のコンシューマ機器およびPC向けの高効率電源ICファミリ「GreenChip」の生産数が4億個に到達したことを発表した。
GreenChipは、環境負荷の低減を目指し、省電力を目的に設計、製造されてきた。こうしたコンセプトは同社の半導体デバイス製造そのものにも影響を及ぼしており、現在、チップ1平方センチメートルの製造に同社が必要とする電力は2001年を100%とすると、2007年にはその半分程度となる57%で製造することに成功している。
また、テレビ向けチップセットだけにくくった場合の製造に必要な電力は、先述と同様に2001年を100%とした場合、2006年実績では、30%弱程度で製造することを可能としている。
NXPセミコンダクターズジャパンの代表取締役社長である松本実氏は、「これら製造時における電力の削減は、ウェハの直径の拡大、設備・機器の革新、ファブ基盤とロジスティクスへの投資などの取り組みにより実現されてきた」と語る。
NXPセミコンダクターズジャパン 代表取締役社長 松本実氏 |
また、半導体業界では欧州のRoHS指令などによる製品への鉛、水銀、カドミウムなどの使用を取り止めているが、同社では、これにハロゲンフリーと酸化アンチモンフリーを加えたチップ・パッケージ・プログラム「ダークグリーン」を展開、「現在の達成度は20%程度であるが、2008年末までには75%の製品に"ダークグリーン"を適用する予定」(同)としている。
第1世代のGreenChipが提供されたのは1997年。当初はブラウン管テレビとモニタの待機電力の効率向上を目指した製品が提供されたという。2001年からは第2世代品がノートPCのアダプタ、およびLCD、DVD、STB向けに作動モードでの効率を向上させた製品として提供され、2007年より待機電力1Wの実現と電力効率を向上させ、デスクトップPCをターゲットにした第3世代製品の提供が開始された。
NXP Semiconductors アジア太平洋地域マルチマーケットセミコンダクターズのシニアディレクターであるアンドリュー・ラッセル氏は「GreenChipを用いることにより、この10年間で削減されたデスクトップPC、ノートPC、テレビの電力は、通常の60W電球に換算すると1,650万個にも及ぶ」と語る。
NXP Semiconductors アジア太平洋地域マルチマーケットセミコンダクターズ シニアディレクター アンドリュー・ラッセル氏 |
また、「現在、2010年の発表に向け第4世代品の開発を進めており、待機時電力1Wを切る製品としての提供を予定している」(同)とも語る。
GreenChipは、特にPCの電源関連での採用が進んでおり、「全世界のノートPCの2台に1台は当社のチップをアダプタに採用している」(同)という。PC電源における電力効率は、一般的なソリューションでは60%程度と低いため、環境負荷の低減を目指し80%以上の効率を目指した取り組みが進められてきた。GreenChipで構成されるソリューションの電力効率は90%以上を実現しており、「高い電力効率により、多くのメーカーが採用するようになった」(同)とする。
このほか、GreenChipは、照明分野などでも高い電力節減効果が見込まれるほか、液晶テレビのバックライトソリューションでは、従来の3段階ソリューションと比較して同社が提供する2段階ソリューションを用いることで、電力を51W削減できるほか、低コストFETやヒートシンクの除去などにより、システム全体の低コスト化も実現できるとしている。