金融庁はこのほど、2007年度4月~12月の預金などの不正引き出しに関する被害状況について発表した。発表によると、偽造キャッシュカードや盗難通帳による被害件数が減少傾向にある中で、インターネットバンキングによる被害件数のみ増加傾向にあることが分かった。

金融庁によると、2007年度4月~12月の預金などの不正引き出し件数は、偽造キャッシュカードが550件(2006年度は通年で663件)、盗難キャッシュカードは3,812件(同6,863件)、盗難通帳は170件(同253件)で、通年で前年度を下回る見込みとなっており、減少傾向にある。

これに対し、インターネットバンキングの被害件数は2005年度は49件、2006年度が100件だったのに対し、2007年度は今回発表があった4月~12月の9カ月間だけで191件となり、唯一増加傾向を示している。

被害額も被害件数に合わせて増加しており、2005年度は約1億500万円、2006年度は約1億900万円だったのに対し、2007年度は4月~12月だけで約1億6,500万円にも達している。

ネットバンキングに関わる犯罪については、警察庁が認識した2007年の事件発生件数113件のうち、逮捕などに至った検挙件数は4件にとどまっており、取り締まりが非常に難しいという特徴がある。

だが、2006年2月に施行された預金者保護法では、偽造または盗難されたキャッシュカードについては、無過失、過失、重過失それぞれの場合の被害額の補償について定めているのに対し、預金通帳やネットバンキングによる不正引き出しの被害に関しては保護の対象となっておらず、全国銀行協会が作成した被害額を補償するための業界の自主ルールで対応しているのが現状だ。

金融庁では、「ネットバンキングの場合は、ATMなどと違って端末を銀行が管理しているわけではないので、犯罪があった場合にトレースするのが難しい。セキュリティ対策が進んでいない金融機関が狙われる可能性も高いので、銀行業界全体に対しセキュリティ対策の強化を呼びかけている」と話している。