米Microsoftが米Yahoo!の検索広告ビジネス"のみ"の買収に向けて同社と交渉を進めていると、米Wall Street Journal(オンライン版)が5月19日付け(現地時間)の記事で報じている。Microsoftは18日夜、Yahoo!全体の買収以外の方法を含むあらゆる代替案の可能性を模索し始めたことを発表したが、その代替案の1つとして検索広告ビジネス部門の買収が急浮上してきた模様だ。同社は5月3日の買収案撤回の前週に同部門のみの買収を提案していたといわれるが、今回の報道でその狙いがよりクローズアップされた。
これは同件に近い人物の情報として報じられたもので、過去数日間にMicrosoftがYahoo!への新提案として浮上させたものだという。買収案撤回前の時点では書面による正式な提案ではなく、Yahoo!側も乗り気ではなかったようだ。同人物によれば、現時点でMicrosoftは具体的な買収金額を提示していないという。だが米Collins Stewart LLCのアナリストSandeep Aggarwal氏が19日に見積もったYahoo!の検索広告ビジネスの市場価格は210億ドルほどであり、Microsoftが当初Yahoo!に提案した1株あたり31ドルの買収提案の総額446億ドルの約半額にあたるようだ。この見積もりは100億ドル程度から、それ以上の価値があるという見方までアナリストによって大きく異なる。Yahoo!がその提案に興味示すかという点と、現在Yahoo!に対して委任状争奪戦を仕掛けている投資家のCarl Icahn氏がこの取引内容で納得するのかという点の2つの問題をクリアできるかが今後の課題だが、MicrosoftがYahoo!への買収提案で同社のどこに価値を見出しているかがわかる点で興味深い。
Wall Street Journalの報道内容で1点気になるのは、今回のMicrosoftの提案の下で「Yahoo!がアジアにおける資産の売却を行い、MicrosoftがYahoo!株の一部を所有する」という取引が計画されている点だ。Yahoo!のアジアにおける資産とは日本のソフトバンクとのジョイントベンチャーであるYahoo! Japanと、中国のECサイトであるAlibabaのことで、近年低迷を続けるYahoo!にとっては数少ない優良資産である。これを手放すということは、Yahoo! Japanの株式がソフトバンク等の企業にそのまま売却される可能性があるということを意味する。もしMicrosoftによるYahoo!(あるいはその資産の一部)買収が何らかの形で成立した場合、日本や中国での勢力図に大きな影響を与える可能性がある。
Microsoftは5月20日(現地時間)、米ワシントン州レドモンドの同本社キャンパス内で「Advance08 (Advertising Leadership Forum)」という広告業界を対象にしたイベントを開催する予定だ。ここではMicrosoftの次世代インターネット検索技術や最新広告プラットフォームについてのデモストレーションが行われる予定で、同社会長のBill Gates氏も同イベントで基調講演を行うことになっている。ここで、今後のYahoo!攻防に関するいくつかのヒントが提示されることになるだろう。