日本HPは16日、SOHO/小規模オフィス向けインクジェットプリンタ4製品を発表、ビジネスインクジェットプリンタ市場向けの製品を強化するとともに、販売チャネルの拡大も図る。

ビジネス向けインクジェット市場は約100万台規模へ成長

執行役員 イメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏

記者発表会の冒頭で「キーワードは"Inkjet for small office~ビジネスにもインクジェット~"です」と語るのは、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 イメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏だ。同社では2005年後半からビジネス向けインクジェットプリンタを展開、販売台数を3年間で約6倍まで飛躍的に増加させてきた。この販売実績を通して分かってきたのが、SOHO/小規模店舗向けに適した製品および市場がないことである。

現在のプリンタ市場全体は、市場規模が約600万台の家庭向けを中心としたインクジェットプリンタ、そして市場規模が約150万台の企業向けを中心としたレーザープリンタやデジタル複合機という、大きく2つの分野で構成されている。しかしSOHO/小規模店舗の場合、一般企業向けのカラーレーザーでは本体価格やランニングコストの高さ、頻繁な消耗品交換などがネックとなる。また、家庭用インクジェットプリンタではインク容量および給紙量の少なさ、ランニングコストの高さ、耐久性の低さといった点で、ビジネス用途に適しているとは言い難い。同社ではこの両者の中間領域に着目しており、挽野氏は「ビジネス向けインクジェット市場は非常に大きく、約100万台規模への成長が見込めます」と語る。

100万台規模のポテンシャルを秘めるビジネス向けインクジェット市場

また、SOHO/小規模店舗におけるプリンタ購入時の重視点としては、本体価格が82%、普通紙での画質が75%、印刷スピードが65%、ランニングコストが61%、プリンタ本体の大きさが60%、操作性が60%、写真印刷の美しさが57%になっているという。こうした顧客のニーズと、前述のインクジェットプリンタおよびカラーレーザープリンタに対する不満点を踏まえた結果、挽野氏は「コストに対する意識が非常に高いことが分かりました」と語る。

ビジネス向けインクジェットに関するユーザーのニーズ

以上のような背景から、同社では顧客の不満点を解消し、期待を超えるような「最強プロダクトの投入」、コストを抑えたいというニーズに対応するための「TCOコスト半減」、100万台規模の潜在市場を開拓するための「全方位チャネル展開」を、ビジネス戦略における3つの柱として前面に押し出していく考えだ。

SOHO/小規模店舗に最適化された新ラインナップ

続いてイメージング・プリンティング事業統括 ボリュームビジネス本部 本部長の竹田芳浩氏より、ビジネス戦略に対する具体的な取り組み内容が紹介された。

イメージング・プリンティング事業統括 ボリュームビジネス本部 本部長の竹田芳浩氏

まず「最強プロダクトの投入」としては、SOHO/小規模店舗の現状に見合った製品を投入。これが今回発表されたA4対応モバイルプリンタの「HP Officejet H470」(1万9,950円、5月16日発売)、A3対応プリンタの「HP Officejet Pro K8600dn」(3万9,900円、5月16日発売)、A4対応複合機の「HP Officejet J6480 All-in-One」(1万9,950円、5月下旬発売)および「HP Officejet Pro L7590 All-in-One」(3万4,860円、6月上旬発売)という4製品である(各プリンタの詳細スペック等は、別掲の記事「日本HP、1万9,950円のビジネス複合機 - 無線LAN搭載 & 自動両面対応」を参照)。

今回発表されたビジネス向けインクジェットプリンタの新製品4機種

HP Officejet H470

HP Officejet Pro K8600dn

HP Officejet J6480 All-in-One

HP Officejet Pro L7590 All-in-One

ちなみにH470は、デスクトッププリンタと共通の大容量インクや、カラーかモノクロのどちらかがインク切れしても片側だけで印刷を継続できる「インクバックアップ」機能を搭載。K8600dnでは、有線LANの標準装備やA3自動両面印刷に標準で対応している。さらに、J6480はFAXやADF、自動両面印刷を搭載しながらも2万円以下の低価格を実現、L7590では超高速かつ低ランニングコストでの印刷を可能にするなど、SOHO/小規模店舗でも使いやすい仕様となっている。そのほか、既存機種を加えたビジネス向けの幅広いラインナップ展開も同社の特徴だ。

ハード・ソフトの両面から約62%のTCO削減効果を実現

「TCOコスト半減」も重要なポイントで、同社によるとインクジェットプリンタの平均ランニングコストは約9円/枚(インク代=8円、用紙代=1円)で、1カ月に1,000枚印刷した場合は3年間で約32万円の出費となるという。そこで同社では、ハードウェアとソフトウェアの両面で対策を行うことにより約62%、金額にして20万円分のTCO削減効果を生み出している。この内訳としては、大容量インクと高耐久プリントヘッドを採用した製品の投入でハードウェア的にインク代を20%削減、さらにプリンタドライバによるインク量コントロールでソフトウェア的にインク代を25%削減、コンパクトモデル以外の全製品が両面印刷に標準対応することで用紙代を50%削減、印刷枚数削減をサポートするソフトウェア「HP Smart Web Printing」および「FinePrint5」でランニングコストを35%削減するというもの。

これにより1枚あたりのランニングコストが9円から3.4円に抑えられ、全体で約62%のTCO削減が可能になったのである。

同社製のビジネス向けインクジェットプリンタによるTCO削減効果予測

メールやWebサイトなど一部分を切り取って、1枚の用紙に貼り付けて印刷できるソフト「HP Smart Web Printing」。これにより、バナー広告等不要な部分を印刷しなくても済む

印刷プレビューを見ながら不要なページを削除できる「FinePrint5」

全方位チャネル展開に関しては、ユーザーが製品に満足できなかった場合の全額返金キャンペーン実施、ヨドバシカメラやビックカメラをはじめとした全国規模での量販店展開、同社PC製品の取り扱いチャネルを中心とした販売代理店への展開により、販売の最大化を図る予定だ。