日本IBMの専務執行役員ソフトウェア事業担当 三浦浩氏

日本IBMは、同社のSOAソリューション戦略について発表した。

日本IBMの専務執行役員ソフトウェア事業担当 三浦浩氏は、「SOAは、IBMの重点領域の1つ。2004年以来、お客様のイノベーション実現を一層支援するための高付加価値ソリューションを提供していくものとしてSOAに取り組んできた。業界ごとにソリューションを提供し、Lotus、DB2、Tivoli、Rational WebSphereといった5つの分野の製品で、イノベーションを加速し、BPMの観点から、顧客のSOA導入を促進する」とする。

日本IBMでは、2005年9月からBPMのライフサイクルをサポートする基盤の提供を開始。これまでに、設計、開発、配置、監視といった4つの観点から、ミドルウェア関連の5つの製品群を活用し、SOAサイクル全般に渡るソリューションを提供してきた。

日本IBMにおけるソフトウェア事業の施策

IBMビジネスコンサルティングサービス 椎木茂社長

IBMビジネスコンサルティングサービス 椎木茂社長は、「ミドルウェアの技術が成熟してきたことで、ソフト開発において、SOAのアプローチが可能になった。まずは、ミドルウェアを活用したSOA技術基盤が確立され、その後、共通プラットフォームによるサービスの実装、さらにアセットによるサービスの流通および再利用といった形に進化してきた。それが今は、業種の枠を越えたバリューネットによるビジネス連携へと広がっている」とする。

SOAによりビジネスモデルが変わる

日本IBMは、金融業界におけるSOAの推進を目的に、参加企業が情報交換などを行う場としてIBM金融SOAコミュニティを5月15日付けで設立している。これも企業や業種の枠を越えたバリューネットによるビジネス連携といえる。

金融SOAコミュニティを5月15日に設立

同コミュニティは、銀行、保険、証券など22社が、業種の垣根を越えて参加。SOAの活用に関する研究や事例紹介、情報交換などを行う場として活用する。「SOAに関する研究活動は、IBMユーザー研究会において行っていた経緯があるが、それはあくまでもテクノロジーベースのものであった。今回のコミュニティでは、ビジネスベースで展開していく点が大きく異なる」(三浦専務執行役員)としている。

一方、日本IBMでは、業界特化型のSOAソリューションとして、保険業界や医療分野といった業界別の作成済み共通サービス「CBS(Composite Business Services)」や業務プロセスモデルなどのテンプレートなどをパッケージ化して提供することで、短期間での実装する可能としたほか、中堅企業向けSOAソリューションであるMEGA-Frameによって、拡張性と柔軟性を実現。

製造業向けのソリューションであるePLM/PDIFでは、製品開発プロセス全般に渡るバリューチェーン一元管理を実現できるという。ePLM/PDIFは、日本においては2008年度後半にサービス提供を開始する予定だ。

同社によると、これまで海外で提供したSOAの実績では、過去1年間の開発削減時間が1万762時間、開発コストを80万ドル以上削減するといった実績や、アプリケーションの変更期間が80日から20日に短縮するなどの成果が上がっているという。

また、日本でも金融業界向けソリューションとして、既存の基幹システムを活用しながら、即応性と柔軟性を備えた戦略的商品、サービスを実現した例を挙げ、「ERPの導入において、既存の業務システムを捨てないと効率があがらないというような提案ではなく、既存システムから新たなシステムに時間をかけながらスムーズに乗り換えられる環境を提供できる。SOAによって、ITを活用してビジネスモデルを変えていく、また、サービスを提供する側のサービスモデルを変えていくことが可能になる」と、椎木社長は語った。

これまでIBMでは、プロセスを可視化し、IT化するためのBPMメソドロジー、WebSphere Business Services Fabricなどを提供してきた。現在では、ビジネス・イベント処理、ビジネス・インテリジェンスとの融合のほか、BPMへの取り掛かりを、さらに容易にする取り組みとしてSOAを進化させてきた。

IBMの提供するBPMソリューション

ビジネス・イベント処理では、2008年1月に買収したAptSoftの製品をベースに、新製品として「WebSphere Business Events」を提供。「結果から統計的に不審な動きを検知するのではなく、トランザクションの中身を分析して、リスクに対して事前に感知することができるようになるツールとして提供している」と三浦専務執行役員は語る。

トランザクションの中身を分析して、リスクに対して事前に感知することができるツール「WebSphere Business Events」

また、ビジネス・インテリジェンスとの融合では、買収したCognosのBI製品と、IBMのBPM製品とを連携。プロセスの一部としてBIコンテンツを包含した。「これにより、データをプロセスの中に組み込み、企業の俊敏性、柔軟性を高めることができる」という。

CognosのBI製品とIBMのBPM製品を連携

そして、BPMへの取り掛かりを容易にするツールとして、「IBM BPM Suite」を提供。「BPMに取り組むために2種類のパッケージを用意している。動的なビジネス・プロセス、あるいはコンテンツ中心のプロセスといった企業ニーズに応じて、モデリングから配備、モニタリングまでのセットとして、2008年第2四半期(4~6月)に発売する予定。ビジネスプロセスを可視化することができる」とした。

BPMへの取り掛かりを容易にするツール「IBM BPM Suite」

「SOAによってサービスを提供するのは当たり前。それだけでは差別化策にはならない。今は、SOAの中身がどうなっているかが鍵になる。IBMでは、SOA基盤とフレームワーク上の業界別ソリューションを提供する。プロセス志向、コンテンツ志向、情報志向といったユーザーニーズに完全対応できるのが強み」とした。

IBMの提供する統合されたソリューション