Imagination Technology(IMG)は4月2日、IntelのCentrino AtomプロセッサにIMGが提供する「PowerVR」グラフィックスIPおよび、同ビデオコーデックIPが搭載されることを発表した。低消費電力ながら高性能なグラフィックス表示を武器に携帯機器を中心に採用が進むこれらのIPは一体どのようなものであるのか、第11回 組込みシステム開発技術展において、話を聞くことができたので、同IPコアの詳細をレポートする。

PowerVR グラフィックスコアは、2Dや3Dの描画を行うコアで古くはセガのコンシューマゲーム機「ドリームキャスト」やグラフィックスチップ「KYRO」などに採用されていた。現在は、第4世代コアとなる「PowerVR MBX/MBX Liteファミリ」と第5世代コアとなる「PowerVR SGXファミリ」が提供されており、Centrino Atomのチップセットであるシステム・コントローラ・ハブ(SCH)には、PowerVR SGXが搭載されている。

同MBX/MBX Liteを中心に採用が成された携帯機器は2008年の春先で85製品、これが上半期中にはSGX採用製品も含め100製品を超す見込みであるという。

PowerVRは画面内の32×32ピクセルを1つのタイルとして区分けするタイルアーキテクチャを採用することで、オンチップ上のバッファだけで描画を行う。また、画像が重なった場合、後ろの画像の計算を行わないことで、演算量を減らすディファードレンダリングやメモリ内に元データをバッファし使いまわすことで、タイルの変更に伴う計算量を減らす工夫などが用いられている。そのため、トータルでは他のアーキテクチャに比べ1/2~1/5程度のメモリバンド幅で済むため低消費電力が可能になる。

SGXは、固定パイプラインで描画を行っていたMBXから、Universal Scalable Shader Engine(USSE)と呼ばれるシェーダエンジンにより処理を行う方式へと変更が行われている。これにより、通常は別々のエンジンが必要とされるバーテックス演算とピクセル演算をマルチスレッド化し、1つのユニットでいずれの演算も行えるようになった。

なお、SGXはOpenGL2.0やOpenGL ES(OpenGL for Embedded Systems)2.0、DirectX 10などに対応しており、ボリュームゾーン用にUSSEが1つの「PowerVR SGX520」、ミッドレンジ用にUSSEが2つの「同SGX530」が、ハイエンド用にUSSEが2つの「同SGX535」などがそれぞれの顧客に向け提供されている。

現在、USSEを4つに増やし、より描画性能を向上させた「同SGX540」「同SGX541」「同SGX545」の開発が進められており、その後継となる第6世代コアの開発も進められている。

PowerVR グラフィックスコアのロードマップ

また、Centrino AtomのSCHにはもう1つのPowerVR IPコアとして「PowerVR ビデオコーデック」が搭載されている。これはマルチスタンダード、マルチストリーム、低消費電力、小面積が特長のハードウェアエンジンで、デコード向けに「M2VX」「VXD370」が、エンコード向けに「VXE250」が提供されており、現在、次世代コアとしてデコード用に「VXD380」が、エンコード用に「VXE280」がそれぞれ開発されている。

VXD370はH.264、VC-1(WMV9)、MPEG-4、MPEG-2などに対応したHD対応ビデオデコーダで、開発中のVXD380はこれにAdvanced Audio Video Coding Standard in Information Technology(AVS)のサポートなどが加えられることとなる。また、VXE250はH.264やMPEG-4などに対応したSD対応のビデオエンコーダで、開発中のVXE280はHDへの対応などが図られる。この内、Centrino AtomのSCHにはVXDシリーズのIPコアが搭載される。

PowerVR ビデオコーデックIPコアのロードマップ

このほか、PowerVRには画像改善を実現する画像処理エンジンが取り揃えられている。主なIPコアは、「I2P-GC(Gradient Compensation)」「I2P-MC(Motion Conpensation)」「IEP(Image Enhancement)」「FRC(Frame Rate Conversion)」「PDP(Pixel Display Pipeline)」「TVE(TV Encoder Output)」で、それぞれのIPを組み合わせて使用することも可能である。

なお、いずれの開発中のIPコアともに近々の(遅くとも年内)のリリースを予定しているという。