NTTデータは、2007年度(2007年4月-2008年3月)連結決算を発表した。売上高は前年同期比2.8%増の1兆744億円、営業利益は同6.3%増の959億円、当期純利益は同39.9%減の304億円で増収、営業増益となった。
また、受注高は同4.6%増の1兆122億円となり、初めて1兆円を超えた。連結子会社の拡大や、既存子会社の売上高増が連結業績に大きく貢献したほか、販管費の減少が好影響し、増収につながった。
今回、同社は売上高を294億円伸ばしているが、同社単独では34億円増だったのに対し、グループ会社は260億円増やしており、増収分の88%を稼ぎ出していることになる。単独での増収には、主として金融分野向けの個別システムの増加などが寄与した。同社は2007年度の売上高を1兆800億円と予想していたが、実際には56億円下回った。これについて同社は「金融分野では、証券、生保、損保向けのサービスの増加があったが、合併・買収した企業が連結対象になる時期が、次の期にずれこんだため」としている。
営業利益959億円の内訳は、単独で792億円、連結子会社は166億円となっている。連結では56億円伸長しているが、単独では前年度比19億円の減、一方、連結子会社分は同75億円の増で、こちらも、連結子会社の拡大がもたらした利益増の貢献度が圧倒的に大きい。原価率の上昇に伴う利益減が43億円だったが、販管費減少による利益増が31億円あり、このような結果となった。当期純利益は、出向政策の見直しなどについて特別損失を計上したことなどで大きく減少した。
売上高をセグメント別にみると、構成比は「システムインテグレーション事業」が70.8%、「ネットワークシステムサービス事業」が6.4%、顧客の経営上の問題点の調査・分析、データ通信サービス関連の企画・提案、維持・管理などが属する「その他の事業」が22.8%となる。「システムインテグレーション事業」の売上高は同0.5%増の8,349億円、営業利益は同2.1%減の902億円。受注損失引当金の計上などが響き減収だった。「ネットワークシステムサービス事業」は売上高が同9.3%増の755億円、営業利益は同35.2%増の52億円。多店舗型ネットワーク、カード決済総合サービスの「CAFIS」が堅調で増収、増益を果たした。「その他の事業」は売上高が同13.9%増の2,694億円、営業利益は同61.7%増の207億円。システム保守・運用サービスの増加が好業績につながった。
中期経営方針では、2009年度に営業利益率10%目指す
NTTデータ 山下徹社長 |
同社は中期経営方針を打ち出している。「お客様満足度No.1を追求すること」(山下徹社長)を主題として掲げ、2009年度には売上高営業利益率を10%にすることを目標とする。2007年度の同利益率は8.9%だったが、この数値達成のためには、同年度、75.7%だった原価率を75%に、同じく15.4%だった販管比率を15%にする必要があるという。
これらを実現させるため同社では「量から質への転換」を基本思想と位置づけている。要するに、売り上げよりはむしろ、利益率に焦点を当てる。具体的施策としては、営業力の強化、育成とともに、開発プロセスの変革を重視している。開発の方法論やプラットフォームの統一化を進めることで、仕事の仕方の標準化を図り、原価率の低減化につなげる。また、グループ経営の効率的推進も大きな柱だ。グループ会社それぞれの役割の整理や、戦略的な購買体制確立で、発注量を生かし、調達コストの削減を図る。
さらに、管理業務の効率化を推進しており、社内ルールの標準化・簡素化、現場支援機能の集約化、現場情報の見える化といった策を講じていく方針だ。そのほか、低採算ビジネスの見直し、成長のエンジンとなりうる事業基盤の構築、人材育成といった面を重点化する。山下社長は「今年度は、経営目標の達成に向けて、各施策を実施していく年になる。集中購買なども本格化させる」と話す。
2009年度、営業利益率10%への展望について、山下社長は「最大のハードルとなるのは、原価率競争になるだろう。システム構築などで、値下げの要求が強くなっており、どこまで原価を下げられるかは大きな問題だ。海外への発注やコスト削減はしているが、値下げ傾向が続いている。また、買収・合併でグループ会社を増やすと、のれん代の償却により、利益が減少してしまうことは悩ましい」としている。
2008年度の業績見通しは、売上高が同4.2%増の1兆1,200億円、営業利益は同9.5%増の1,050億円、当期純利益は同77.3%増の540億円、受注高は同1.2%減の1兆円としている。同社では、引き続き、連結子会社の拡大による増収を見込んでいるとともに、中期経営方針に準拠した各施策、原価率改善、販管費効率化により、営業利益率を9.4%とすることを目指している。受注高は、中央省庁の情報化予算縮小の影響があるものとみており、122億円の減少を予想している。
就任1周年を迎える山下社長は2007年度を振り返り「出向や転進の支援についてようやく形がついたことを一番ほっとしている。転進の援助では、労働組合の要望に基づいて実施した。社員に理解を得られ、スムーズにできた」と述べた。