東芝 代表執行役社長 西田厚聰氏 |
東芝は、2010年度に売上高10兆円、営業利益率5%を目標とする中期経営計画を発表した。
東芝の西田厚聰社長は、「成長へのさらなるシフトと戦略的資源配分による攻めの経営を加速する」として、「デジタルプロダクツ、電子デバイスの成長事業領域では、競争力の強化、高成長および高収益の継続化に引き続き取り組む一方、これまで安定成長、安定収益を目指していた安定事業領域の社会インフラ事業に関しても、海外への展開を中心に高成長戦略へと転換することになる。すべての事業領域において、高成長、高収益を実現し、それぞれの事業が世界で勝ち残ることを目指す」と強気の姿勢を見せた。
西田社長は、社長就任以来、経営方針として、「利益ある持続的成長の実現」、「イノベーションの乗数効果の発揮」、「CSR経営の遂行」の3点を掲げてきたが、今年4月から「グローバル人財の育成」を新たに加え、「多様性を受容、発揮し、次々とイノベーションを起こす東芝人育成によるグローバル事業展開の加速を目指す」と述べた。海外の人員は、2010年までに1万6,000人を増員する計画で、さらに、国内の社員のうち、2,000人以上を対象に、グローバル人財育成プログラムを実施し、グローバルで活躍できる人材を育成する考えを示した。
今回の中期経営計画では、海外事業の強化が重点事項となっており、2010年度目標の売上高10兆円、営業利益5,000億円のうち、海外売上高比率を60%(2007年度実績では52%)、海外営業利益比率は50%(同37%)を目指す。
デジタルプロダクツ事業では2010年度の海外売上高比率を76%に、電子デバイス事業では67%に、社会インフラ事業では42%へと、いずれも海外比率を拡大することを計画している。
デジタルプロダクツ事業においては、2010年度の売上高目標を4兆1,000億円とし、年率12%の高い成長を描く一方、営業利益率は2.4%として、2007年度の0.5%から大幅な改善を図る。
「PC事業、HDD事業の収益拡大、映像事業の収益改善によって、デジタルプロダクツ事業を収益の第3の柱に育てる」(西田社長)とする。中でも、鍵となるのはPC事業の拡大である。2007年度には1兆400億円と初めて1兆円を突破したPC事業だが、今後も年率平均18%の売上高成長を見込み、2010年度には1兆7,000億円の売上高を見込む。「BRICsなどにおける販売拡充、米国およひ欧州におけるシェア伸張といったグローバル展開に加え、高品質技術、環境調和技術を採用。AVノートPCではSpurs Engineによる超解像度機能による差異化、モバイルPCではSSD搭載による省エネ化、軽量化、堅牢性強化、燃料電池搭載によるバッテリの長時間駆動による差異化を図る」とした。
同社では、2010年からSDDによるHDDリプレースが始まると予測しており、「2010年には、ノートPCの10%、2011年には25%をSDDが占める」と予測している。
一方、テレビを中心とした映像事業に関しては、各地域のニーズに合わせた商品展開を軸にグローバル戦略を強化。超解像機能を搭載したテレビやDVDプレーヤを発売する計画を示し、次世代光ディスクには参入しない姿勢を示した。また、HDD搭載テレビやHDDレコーダ事業の強化、オペラグラス機能やマルチ同時録画・再生機能などを搭載したCell搭載テレビの投入などに取り組む考えを明らかにした。
2.5型および1.8型に事業を集中しているHDD事業では、同サイズでのテラバイト商品のいち早い投入や、カムコーダ、カーナビ、ゲーム機などの新規分野での事業拡大に取り組む。
モバイル事業では、モバイル機器とPCの融合による高速無線インフラに対応したモバイル情報機器の投入を計画していることを明らかにした。
一方、電子デバイス事業では、2010年度目標で売上高が2兆4,300億円と、デジタルプロダクツ事業と同様、年率12%の高い成長を目指し、営業利益率は8.2%。NAND型フラッシュメモリ、ディスクリートの収益拡大、システムLSIやディスプレイの収益改善がポイントとなる。
社会インフラ事業の2010年度目標は売上高で2兆8,100億円と、年率5%増の成長戦略への転換を図り、営業利益率は6.0%を目標とする。電力システムや医用システムなどのすべての事業での収益拡大を目指すという。
家庭電器事業は、2010年度の売上高目標が9,400億円と、年率7%成長を計画。営業利益率は2.1%を目標とする。