米マイクロソフトコーポレーション会長 ビル・ゲイツ氏

米マイクロソフトコーポレーションの会長であるビル・ゲイツ氏が来日。都内のホテルで会見を行い、Windows Vistaに搭載しているWindows Media Center(WMC)において、地上デジタル放送へ対応することを正式に発表した。

次世代のWMCであるFiji(開発コードネーム)でサポートすることになり、今年後半にも出荷されることになる。

ゲイツ氏自身、Windows Vistaの発売後では、今回が初めての来日。それにあわせて、日本市場特有の機能となる地デジ対応機能を、VistaのWMCに搭載すること正式に発表し、低迷している国内コンシューマPC市場に弾みをつける考えだ。

また、買収を断念したヤフーに関しては、「CEOのスティーブ・バルマーが発言しているように、いまは独立した形での戦略に集中している。今後、サーチ技術の新バージョンを公開できる」などとした。

なおゲイツ氏は、同社新年度が始まる今年7月以降、マイクロソフトの経営の第一線から退き、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を中心に活動することを発表しており、経営に直接関わる立場としては、今回が最後の来日となりそうだ。

ゲイツ会長は今回の会見で、日本における2つの新たな施策について発表した。1つは、Windows Media Center(WMC)における地デジ対応。そしてもう1つは、今年2月に米国で発表していたDreamSparkプログラムを、日本でも開始するということだ。

地デジ対応については、日本のPCメーカーから要望されていたもので、来月にもその詳細について日本で発表することを明らかにした。これまで地デジ対応は、日本のPCメーカー各社が独自に対応してきたが、早ければ年末に発売されるPCにおいて、WMC上から地デジが利用できるようになる。

DreamSparkプログラムは、学生に対して開発ツールなどを無償で提供するもので、「若いエンジニアの育成のための支援策といえる、これまでにない革新的なプログラム。マイクロソフトが提供するすべてのツールを利用できるようになる」とした。

一方、次期OSとなるWindows7については、「現時点では出荷日などは明確にできない。パートナーやユーザーからのフィードバックを得て調整する必要がある。これまで新しいWindowsは2~3年に一度出荷してきたが、今回はそのサイクルではないだろう。すでにVistaは1億4000万ものユーザーに利用されており、成功している。だが、Windowsはまだまだ進化を続けることになる」として、早いタイミングで出荷が開始される可能性があることを示した。

ゲイツ会長は会見の冒頭、「30年前に日本に初めてやってきた時に、西和彦氏(アスキー創業者)と一緒に、日本でどうやってPC事業を拡大するか、日本の企業とどうパートナーシップを組むかといったことを考えたことを思い出す。NECのPC-8000にBASICを搭載したのが、日本でのビジネスの始まりである。日本は、米国と並ぶ二大市場であるとともに、GUIの方向性を定着させた市場であること、オフィス製品を統合した形で初めて出荷した市場であるなど、思い出も多い。日本の市場から多くのことを学んだ」と、日本との関わりについて言及した。

また、「世界で最もイノベーションが進んでいるのが日本といえる。今日もWDLC(Windows Degital Lifestyle Consortium)の方々とお話しをする機会を得たが、ここに、日本の重要な企業が参加しており、これからのイノベーションに期待したい。だが、その一方で、若い学生のPCの使用率が低いことが問題だ。教育機関における接続性が悪いのも要因といえるだろう」などとした。

一方、7月1日からの自身の取り組みについては、「17歳の時から、フルタイムでマイクロソフトで働き、パートタイムで財団の活動に取り組んできたが、7月からはキャリアが変化し、パートタイムでマイクロソフトの会長の仕事をし、フルタイムでゲイツ財団の活動を行う。財団の活動やマイクロソフトの会長として、今後も日本にくることはあるだろう。私がマイクロソフトで果たしたのは小さな仕事であり、他の人がもっと評価されてもいい。私よりも評価されてほしい」と語った。

記者の質問に答えるビル・ゲイツ氏(左)とマイクロソフト代表執行役 社長の樋口泰行氏(右)