コールドプレイが公式サイトを通じて新曲「Violet Hill」のMP3版を無料ダウンロード提供している。NMEの報道によると、開始から24時間でダウンロード登録が60万件を突破したという。
これは6月12日に発売されるニューアルバム「Viva La Vida」(美しき生命 : 日本国内では6月11日発売)のプロモーションの一環で、提供期間は英国時間の4月29日から1週間。公式サイトで電子メールアドレスを登録すると、ダウンロードURLが送られてくる。無料提供はMP3版だけではなく、5月7日発売のNME MagazineにViolet Hill/ A Spell A Rebel Yellの7インチシングルが付けられる。またコールドプレイは、ロンドン、ニューヨーク、バルセロナなどで無料コンサートの開催を計画している。
ラジオに以前のような影響力がなくなり、若年層の雑誌離れが進む中で、ニューアルバムのリリースをいかに強くアピールするかが音楽販売の課題になっている。無料ダウンロード提供は先行シングルの売上減というリスクを伴うが、 現状では先行シングルを上回る話題づくりが可能だ。コールドプレイ側は「より多くに新作を聞いてもらうため」と無料提供の理由を説明しており、これがアルバムセールスにどのように影響するかが注目される。
ミュージシャンの公式サイトを通じた新作のダウンロード提供というとレディオヘッドが草分けだが、中心メンバーのトム・ヨークが「In Rainbows」のような販売方法を新作では採らないとコメントしたとThe Hollywood Reporterが伝えている。In Rainbowsではダウンロードした人が自由に価格を決められる実験的な販売方式を実施したものの、comScoreの調査によると無料入手が6割を超えていた。ただしトム・ヨークはIn Rainbowsのダウンロード販売が失敗だったと見ているのではなく、今同じような提供方法を採用しても、In Rainbowsリリースのタイミング(07年10月)のような意義はないと述べたという。レディオヘッド以降、ナイン・インチ・ネイルズやプリンスがダウンロード提供に乗り出すなど、大手レーベルを中心とした既存のビジネスモデルを変えようとする動きが活発になっている。今回のコールドプレイの場合は、CD販売という既存スタイルのサポートに無料ダウンロードを活用している形だが、これもIn Rainbowsの実験の延長線上にあると言える。