PCからモバイルまで、子どもにとって「安心、安全」なサイトを認定するための第三者機関「インターネット・コンテンツ審査監視機構(Internet-Rating Observation Institute、以下「I-ROI」)」設立委員会は25日、5月中にも同機構を設立すると発表した。デジタルメディア協会(AMD)などで健全なサイトを認定するための基準策定を行ってきたメンバーらが中心となり、ネットコンテンツを審査する新たな機関を立ち上げる。
デジタルメディア協会ではこれまで4年間にわたり、一橋大学名誉教授の堀部政男氏を会長とし、「コンテンツ安心マーク(仮称)調査研究会」、同研究会を発展させた「コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会」などで、18歳未満の青少年がインターネットを安心して利用するためのガイドラインの策定を行ってきた。
今回同協会のメンバーらが中心となって設立されるI-ROI(アイロイ)は、同協会が策定してきた複数のガイドラインを基に新たな基準を策定、この基準を用いてPCやモバイルのサイトの健全性を客観的に認定する。認定したサイトには、年齢別・利用シーン別の「安心マーク」を付けることで、児童・生徒の円滑なインターネット利用を促進することを目的としている。
25日に開かれたI-ROIの設立発表会では、堀部氏のほか、東京工科大学学長の相磯秀夫氏、コーエーファウンダー取締役名誉会長の襟川恵子氏、慶應義塾大学大学院教授の中村伊知哉氏、NTTドコモ執行役員の夏野剛氏、森本紘章法律事務所の森本紘章氏の6人が登壇。
I-ROIの代表理事となる東京工科大学の相磯氏は、「インターネットの普及による恩恵がある一方、弊害ともいえる陰の部分も顕在化しており、深刻な社会問題も引き起こしている。青少年をネット上の違法・有害情報から保護する手段として、サイトの違法・有害性を客観的に判断することができる基準が必要とされている」と指摘。
その上で、「サイトの多様性や表現の自由を考慮すると、こうした基準を策定する機関は複数あったほうがよく、利用者がさまざまな認定制度を選択できることが望ましい」とし、4月8日に設立された携帯サイトの有害性を審査するための第三者機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構」(EMA)などと並行して、健全なサイトの審査・認定を行っていく方針を示した。
また、「単なる認定にとどまらず、青少年や保護者のネットリテラシー向上のためのシンポジウム開催や、青少年を違法・有害情報から保護する上での国際的モデルを示すことも目標としている」と、今後の抱負を述べた。
登壇者の発言が一巡した後の質疑応答では、自民党などが議員立法の作成作業を進めている、ネット上の違法・有害情報規制法案についての質問が会場からあった。
これに対し、I-ROIの顧問となる一橋大学の堀部氏は、「こうした法律は、表現の自由や検閲の禁止などを定めた憲法の価値基準を超えるようなものになることも考えられる。I-ROIやEMAなどの第三者機関の活動を通じて、青少年保護は民間でも十分にできることを示さなければならない」と述べ、性急な議員立法の動きに憂慮を示した。
I-ROIの設立委員会では今後、会員を広く募集し、5月中の設立を目指す。その後サイトの審査・認定基準の策定作業を行い、具体的なサイト認定は9月から始めるとしている。