4月21日、調査会社のビデオリサーチインタラクティブ(以下、VRI)と、エヌ・ティ・ティ レゾナント(以下、NTTレゾナント)、マイクロソフト、ヤフーの大手ポータルサイト運営事業者3社の合わせて4社は、2007年3月~12月のインターネット広告に関する共同調査の結果を発表した。

写真左から、ビデオリサーチインタラクティブ 代表取締役社長 荻野欣之氏、ヤフー 広告本部 マーケティング本部長 近藤弘忠氏、マイクロソフト NDAS セールス&プランニング 業務執行役員 福徳俊弘氏、NTTレゾナント ポータル事業本部 広告営業部門 シニアマネージャー 宮原慎治氏

今回の調査では、インターネット広告においてもブランディング効果(広告露出自体による効果)があることが検証できたという。また、広告の効果を評価する際の基準となるNorm値も作成し、インターネット広告出稿によるブランディング効果の予測や、個別の出稿事例に対する効果の評価が可能となった。今回の調査結果とNorm値について、4社は今後のインターネット広告事業の展開と発展に活用されることを期待し、無償で公開を行っていく予定だ。

「従来のインターネット広告の分野には、テレビや雑誌といったほかのメディアにあるような広告露出自体の効果に関する指標がなかった。インターネット広告を使いこなしていくために、その効果を測定できるような使いやすく分かりやすい指標が欲しいという要望が長らくあった」(ヤフー 広告本部 マーケティング部長 近藤弘忠氏)。「そのニーズにお応えしようというのが、今回の共同調査に至ったきっかけ」(同氏)。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったメディア上の広告には、広告の効果を測定するための基準となるNorm値、効果指標が設けられている。これまで、インターネット広告においては、クリックスルーレート(CTR)やコンバージョンレートといった、ダイレクトレスポンス効果の指標が活用されてきた。インターネットのバナー広告を例に挙げると、バナーが表示された回数に対して、閲覧者が広告をクリックした回数の比率がCTR。バナーをクリックして広告サイトに移動した人が、そのリンク先で商品の購買やサービスへの登録といった行動に至った割合をコンバージョンレートとなる。

だが、インターネット上で広告を掲載することそれ自体の効果(ブランディング効果)が見込めるのかという検証は進んでいなかった。広告を見た人がどのような行動を取ったか、という点に関しては豊富な蓄積があるものの、広告を見た閲覧者に、はたして商品のことを知ってもらえたのか、商品をどのように感じてくれたかということを測定する手段に乏しかったというわけだ。「従来はそれぞれの会社が独自のやり方で効果を検証してきた。だが、より汎用性が高く信頼のおける指標を提供するためには、業界横断的な取り組みが必要だった」(近藤氏)。

導き出されたブランディング効果の法則

今回の調査は15歳以上のPCインターネットユーザーを対象に行われ、のべ38,000のサンプルを回収。得られたデータからは「インターネット広告出稿におけるブランディング効果3つの法則」が導き出された。

1. インターネット広告ブランディング効果の法則

インターネット広告の到達者のうち、29.1%が広告を認知し、62.0%が広告内容を理解している。広告到達者の30.4%が商品の購入あるいは利用の喚起に至る。広告到達者の広告メッセージ理解、および商品校購入・利用の意向はそれぞれは非到達者の1.25倍、1.15倍となっている。また、業種・商品・タレントの使用などの条件によっては60%を超える広告認知率を獲得可能である。

2.インターネット広告フリークエンシーの法則

広告に対するフリークエンシー(接触頻度)が12回になるまでに、広告認知・商品認知・商品好意度は上昇する。13回以降においても広告メッセージ理解・商品購入利用意向などが上昇。フリークエンシー12回の広告到達者は非到達者に比べメッセージ理解が1.55倍、商品購入利用意向は1.35倍に。商材別に見ると、自動車は4回より上昇し、家電・AV機器は16回以降も上昇傾向が見られた。

3.インターネット広告インプレッションの法則

1,000万インプレッション出稿時の広告認知者数は130万人。商品興味・関心喚起者数は57万人、商品購入・利用喚起者数は38万人。

また、「ブランディング効果における5つのヒント」と題して、ブランディング効果をよりいっそう高めるための知見をまとめている。

  1. 音やエキスパンド等のリッチ素材が広告認知・ブランディング効果を大幅に上昇させる
  2. タレントやキャラクターを使用することが広告認知・ブランディング効果を大幅に上昇させる
  3. 告知型・キャンペーンサイトの活用が広告認知・ブランディング効果を上昇させる
  4. ブランドロゴ等からのイントロは使用しない方がブランディング効果を上昇させる
  5. 新商品においてもインターネット広告はブランディング効果を発揮

広告認知率の上昇を示す実際的な数値として、リッチ素材については非使用時では28.0%であるのに対し、使用時は8ポイント増の36.4%、タレント・キャラクターについては非使用時が23.7%であるのに対し、使用時は12ポイント増の35.9%であるとしている。

なお、調査を実施したVRIでは、今回のデータをもとにして、インターネット広告のブランディング効果予測を行うシミュレータを開発。後日、同社のホームページにて公開する予定。ユーザ登録を行えば、無料で利用することができるという。

VRIが公開を予定しているシミュレータ

ヤフー 広告本部マーケティング部長 近藤弘忠氏に聞く

――インターネット広告にもブランディング効果が認められたという今回の調査結果を踏まえたうえで、今後はどのような広告を打ち出していくのか?

近藤氏 まずは広告をユーザーがどう受け止めるのかを見ていきたいと思っている。まずは、そこで表現できる内容を濃くしていき、コミュニケーション力を増やすということ。たとえばそれは動画を使った広告であるかもしれないし、エキスパンド広告であるかもしれない。

――調査結果をどのようにとらえているのか?

近藤氏 今回はノンターゲットの調査だったが、ターゲット広告を使って精度を高めれば、さらにブランディング効果が期待できると考えている。

――テレビをはじめとするマスメディアの衰退が叫ばれる中で、インターネット広告に期待されるものも変わってくる。全体的な広告戦略からすると、興味や関心をまだ持っていない層に対しても、商品を認知してもらう必要があるのではないか。そのためにインターネット広告ができることは何であると考えているのか。

近藤氏 確かに、広告は本当にピンポイントのターゲティングだけではなく、その周辺にいる「予備軍」も対象に入れなければならない。その点に関していえば、弊社では行動ターゲティングを行っている。行動ターゲティングによって予備軍の傾向を把握し、その層に対して商品やサービスをアピールしていく。特定のターゲットにしぼるだけでなく、異なるダーゲットを重層的に共有しながら、広告を展開していきたい。もちろんそれぞれのターゲット層は異なるので、コミュニケーションの取り方は変わるし、クリエイティブも変わってくる。そのなかで、あれは良かった、これが悪かったという部分を整理しながら、試行錯誤を繰り返すことで広告の精度を高めていけたらと考えている。