米Microsoftは4月18日(現地時間)、「Albany(開発コード名)」と呼ばれる新サービスのベータテストをひっそりと開始した。Albanyとは、同サービスを契約したユーザーに対して同社の"productivity tools"と呼ばれるソフトウェアやサービスの最新バージョンの導入を可能にするもの。契約ユーザーは「Microsoft Office Home and Student 2007」「Windows Live OneCare」「Windows Live Mail / Messenger / Photo Gallery」といったOfficeやセキュリティ製品を、わずか数クリックの操作で一括導入できる。また有料契約が有効期間内である限り、つねに製品を最新バージョンへとアップデートできる特典もある。

このように契約に応じて一定期間ソフトウェアの使用ライセンスを与えられる形態を「サブスクリプション」と呼ぶが、AlbanyはMicrosoftが自身の主力製品をサブスクリプションで提供するためのテストプログラムだといえるだろう。すでにサブスクリプションが導入されているWindows Live OneCareなどを除けば、従来型の永久ライセンスが付与される"売り切り"モデルのMicrosoft Officeにサブスクリプションを適用するのは初となる。サブスクリプションの更新と引き替えに、ユーザーはつねにWord、Excel、PowerPoint、OneNoteといったOffice製品の最新バージョンを入手することが可能だ。またAlbanyにはMicrosoft Office Live Workspaceへのコネクタも用意されており、Microsoft Officeのツールバーを経由してWorkspace上で他のユーザーと文書ファイルの共有ができる。

Albany導入の狙いについて米Microsoft "Albany"グループ製品マネージャのBryson Gordon氏は「ユーザーが必要としているソリューションを手間をかけずに導入する」点にあると説明する。またサブスクリプションが更新され続ける限り最新バージョンへのアップデートが可能なため、Microsoftからの最新アップデータがつねに提供されるのを保証することも意味している。価格や一般向けリリースの時期は明らかにされていないが、同社によれば今年2008年末にも詳細情報を公開する計画だという。今回のベータテストは限定ユーザーを対象にしたプライベートベータとなるが、ここでのフィードバックを経て、最適な価格やスタイルを探るのが狙いだ。

興味深いのは、Microsoftが新たな収益手段を模索し始めた点だ。先進国におけるPCの普及率はほぼ飽和状態にあり、すでに買い換えサイクルを中心に回っている状態に近い。以前までであれば新製品をリリースすることでユーザーの購買意欲を刺激することができたが、現在では更新サイクルも間隔が開きつつあり、旧バージョンからの移行を望まないユーザーも増えつつある。従来型のMicrosoftの販売スタイルではユーザーは一度ソフトウェを購入すればそのまま使い続けることが可能なため、更新サイクルの長期化はビジネス的にはマイナスに作用する。ウイルス対策ソフトと同様に、最新アップデートの保証と引き替えにサブスクリプションを適用するスタイルは、こうした現状のジレンマを打破する可能性を秘めている。

だが前述のGordon氏は「次世代OfficeがAlbanyになるわけではないし、それらはきちんと従来型のソフトウェア形式でユーザーに提供される。Albanyはあくまで導入モデルの1形態であって、全ユーザーに強制するものではない」と念を押す。

導入されるソフトウェアがMicrosoft Office Home and Student 2007であることからも分かるように、Albanyが当初ターゲットとするのはホームユーザーや教育関連のユーザーだ。「値段が高くて導入できない」「新バージョンをいきなり導入するのは勇気がいる」と考えているユーザーに対して、サブスクリプションを通してより安価で製品を提供し、新バージョンへの敷居を低くすることで裾野を広げていこうというのがAlbanyの当初のミッションとなる。