F5ネットワークスジャパンは16日、オンデマンドアプリケーションデリバリコントローラ(Application Delivery Controler: ADC)としてシャシー型筐体を採用した最新モデル「VIPRION」(ヴィプリオン)の国内販売を開始した。価格は、AC電源モデル・シャシーが699万円、DC電源モデル・シャシーが899万円、ノーマル仕様ブレードが1,979万円、NEBS仕様ブレードが2,573万円。最小構成では、シャシー + ブレード1枚で動作する。さらに追加ソフトウェアとして圧縮、最大限のSSLライセンス、クライアント認証機能、キャッシュ、IPv6のライセンスをひとまとめにした「VIPRIONパフォーマンス・パック」も用意される。価格は1,399万円(シャシー単位)。

VIPRION

F5 Networks プロダクト・マネージャ Nathan Meyer氏

製品説明を行った米F5のプロダクト・マネージャのNathan Meyer氏は、VIPRIONについて「革新的な拡張性を備えたADC」だと位置づけた。同社が従来から提供しているBIG-IPなどのロードバランサ製品では、トラフィックが増大して処理能力が不足してきた場合には台数を増やすことで対応することになる。この場合、台数が増えることに伴う管理負担の増大が問題になる。具体的には、DNSの変更、物理的なネットワークトポロジの変更、ルーティングの変更、そして新規/既存の両方のADCの設定変更も必要となる。VIPRIONではシャシーに最大4枚のブレードを挿入できるため、処理能力が不足した場合にはブレードの追加で対応できる。ブレードの追加は「No Downtime, No Configuration」(ダウンタイムなし、設定変更なし)だという。この点を踏まえ、同社はVIPRIONを「オンデマンドADC」と表現している。必要に応じて必要なだけの処理能力を追加できるという意味だ。同氏は既存のBIG-IPとの使い分けについて、「データセンター内の負荷分散には拡張性に富んだVIPRIONが向き、複数データセンターをまたがる負荷分散にはBIG-IPなどの既存のADCがいい」と基本的な棲み分けを示唆した。

ブレードには、プロセッサとしてデュアルコアAMD Opteronが2基搭載され、計4コアが使用される。ブレード間はシャシー内のバックプレーンで相互接続されるが、各シャシーに搭載された、パケットをコアに振り分けるための"Disaggregator"と、"Switch Fabric"とプロセッサコアを直接高速に接続するための"High Speed Bridge"などにより、通過するパケットからはシャシー内の最大16コアをすべて同じように利用できる。このアーキテクチャによって、スケーラブルな性能向上が実現したという。同社はこのアーキテクチャを"CMP"(Cluster Multi Processing)と呼んでおり、分散アーキテクチャに対応したモジュラー型OSであるTMOSとの組み合わせで実現した同社の大きな強みの部分だとする。

従来のADCでの拡張時の問題点

VIPRIONのアーキテクチャ

F5ネットワークス アクセラレーション ソリューションズ プロダクトマネージャ 多賀俊雄氏

次いで日本市場での位置づけについて説明を行った同社のアクセラレーション ソリューションズ プロダクトマネージャの多賀俊雄氏は、「ブレード単体での性能で見れば既存のBIG-IP 8x00シリーズと同等だが、スケーラビリティが必要な場合はVIPRIONとの差が出る」とした。

なお、Meyer氏は質問に答える形でVIPRIONシリーズの将来のロードマップについても言及し、来年以降になるが、クアッドコアプロセッサの採用や8ブレード収容可能なシャシーの投入も検討していると語った。

同社の製品ポジショニング