著作物の権利者団体、利用者団体などでつくる「デジタル時代の著作権協議会(CCD)」は14日、同協議会での研究成果を発表するシンポジウムを東京都渋谷区で開いた。イタリアで日本のアニメなどの海賊版が横行している実態や、権利主張のためにとった措置などを紹介、「各国の制度に合った権利主張をしていくことが重要」と訴えた。
CCDは、著作物のデジタル化、ネットワーク化への対応を議論、研究するために1999年に設立。日本音楽著作権協会(JASRAC)などの権利者団体、利用者団体など31の団体で構成されており、著作権に関わる法制度や技術を研究する「権利問題研究会」とデジタルコンテンツの流通基盤を研究する「著作権ビジネス研究会」を設置している。
6回目となる今回のシンポジウムの冒頭では、文化庁長官官房 著作権課 著作物流通推進室長の川瀬真氏が著作権行政の現状を報告。法制問題小委員会や私的録音録画小委員会などでの審議状況を説明した。
その後、著作権に関する法制度や技術的保護手段などの研究を行っている権利問題研究会の主査を務める久保田裕氏が、2007年度の同研究会の活動内容について発表を行った。
同研究会では、海賊版を宅配するサイトを運営する業者の活動をやめさせるため、イタリアに渡航。イタリアの制度ではこうした犯罪を摘発する法制度が整っていなかったため、この件での摘発は断念する結果となったが、実際に店頭で海賊版を販売されている実態について調査を行うことができた。
同調査によると、イタリアでは海賊版でも真正品と同じ価格で販売されていることが判明。また、調査対象となった店舗では真正品がほとんどなかったことが分かった。同国のLucca(ルッカ)市で開かれた日本のコミケのようなイベントでも、日本アニメのキャラクターのコスチュームした参加者が多く、日本アニメの人気ぶりが示される一方、そこで販売されているDVDなどはほとんど海賊版であったことも明らかにされた。
久保田氏はこうした現状について、「日本人がヨーロッパに抱いている順法意識が高いというイメージとは異なり、イタリアだけでなく、フランス、スペインなどでも海賊版の被害は大きい。今回のイタリアのケースでは、店頭での海賊版販売について権利侵害を当局に理解してもらえることができた。権利保護のためには、各国の制度をよく調べ、それに合った権利主張をすることが重要となる」と訴えた。
久保田氏はまた、Winnyなどのファイル交換ソフトに関する研究結果についても報告。2006年度の調査では同ソフトの利用者はインターネット利用者の3.5%だったのに対し、2007年度の調査では9.6%とほぼ1割を占めるまでに急増。同ソフトの利用をしないよう呼びかける啓発活動がなかなか効果をあげていない実態を示した。
その上で久保田氏は、ファイル交換ソフトによる著作権侵害への対策として、「啓発活動などと並行して、コンテンツ自体にDRM(デジタル保護技術)を施し、コピーやアップロードを抑止したり、正規のコンテンツ流通を実現させたりする方策をとることも1つの方法」と提言。こうした方策が結果として、P2P技術が違法行為のために利用されるのではなく、コンテンツ流通の有用な手段として用いられるのではないかと述べた。
久保田氏の後は、CCD代表幹事で著作権ビジネス研究会主査の菅原瑞夫氏が同研究会の活動について報告。権利者データベース構築を行う上で必要となる「著作者・実演家の氏名表示などに関するガイドライン」について紹介した。