日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 ディレクター 塚越秀吉氏

日本オラクルは、ネット広告のシステムとCRM製品「Siebel CRM」を連携させたソリューションを提案していく意向を示した。企業のネット広告の利用状況についてのさまざまな情報を活用、営業の現場に還元、潜在顧客の発掘、見込み顧客への接触など、マーケティング、実際の営業活動、サービスに適用、企業の競争力強化につなげることを図る。検索連動型広告のオーバーチュアとともに、新たなソリューションの市場での認知度向上、啓蒙活動を実行していく方針だ。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 ディレクターの塚越秀吉氏は「今後、経営幹部がIT投資を強化しようと考えている項目のトップ3は、"マーケティング/セールス"、"ナレッジ管理"、"R&D"」との事実を紹介「マーケティング/セールスはIT化が遅れている分野。Siebel CRMも当初は、案件管理、パイプライン管理などにフォーカスしていたたが、これからは、まだ顔の見えない層に対しても、一定の行動状況、関心のあることなどのデータが得られれば、どのようなプロモーションをしていけば良いか、活動に生かしていける」と話す。

オーバーチュア アドバイザリーソリューションズ シニアディレクター 山中理恵氏

一方、インターネットの普及とその接続環境のブロードバンド化が進展したことにより、さまざまな商品をネット経由で購入する習慣が広まるとともに、例えば、音楽のように、商品としての価値をデジタルデータ化できるものは、ネットを通じて、直接、手に入れることも可能になった。ここで重要性が高くなるのは、検索だ。オーバーチュア アドバイザリーソリューションズ シニアディレクターの山中理恵氏は「インターネットが一般的になる以前の、消費者の購買行動は、ある商品をテレビなどの媒体で見て、興味を抱き、広告を見て、買う、というような流れだったが、インターネットの普及以後、何か興味を持てば、消費者はまず、ネットで検索し、世評なども参考にしながら、買うようになった」と指摘する。

大手広告代理店、博報堂の調査によれば、商品購入に際して、情報を収集する場合のWeb活用率は、買おうと考えている商品がパソコン、デジタルカメラの場合、50%を超えており、テレビも48.2%に達しているという。かつては、インターネット広告や、企業がWebサイトでの情報発信を強化することは、電子商取引をしているところでなければ、さして大きな意味はないとの考え方もあったが、このような状況の下では「電子商取引をしていない企業であっても、ネットで多くの情報を提供していくべきなのでは」(山中氏)ということになる。

ネット広告の分野では、検索エンジンでの検索結果との関連事項として広告を表示して相乗効果を狙う検索連動型広告が台頭しているとともに、「新しい潮流が生まれている」と、山中氏は語る。検索するための機器がパソコンだけでなく携帯電話にも広がっているとともに、「インターネットは双方向なものなので、サービス提供側は、エンドユーザーの情報がある程度蓄積される。それらを組み合わせて、広告に活用すれば、効果は高くなる」(同)とする。

また、ネット広告は、効果が上がるまでの過程を、クリック数、閲覧ページ数、Webサイトでの滞在時間など多様な指標を用い計測し、可視化することが可能だ。「検索連動型で、検索結果とともに広告が表示されていても、クリック数が少なければ、広告文が十分でないかもしれないなど、問題点がわかやすくなるのが、ネット広告の特徴であり、次に何をすべきかが明確になる」(同)

日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 CRM SC部 シニアセールスコンサルタント 近藤祥行氏

山中氏は「これまでのマーケティングでは、セミナーなどで100件の見込み顧客を獲得すれば、そのキャンペーンだけが評価されていたが、営業部門からすれば、実際には、あまり実績につながらない、というようなこともあった。しかし、この100件をCRMで管理、分析すれば、例えば、100件のうち、成約率が28%あった、ということまでを踏まえ、そのキャンペーンは成功だったといえる」と述べ、「これまでのネット広告は閉じたものだったが、CRM、ERPと連動することで、経営層にも、投資対効果がよくわかるようになる」としている。

従来、CRMは、特定された顧客に対し、企業が決め細やかな対応ができるようにすることが大きな目的だったわけだが、新たなソリューションでは、「マーケティングとセールスの架け橋」(日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 CRM SC部 シニアセールスコンサルタントの近藤祥行氏)としての機能を備える。マーケティングの段階で実施したキャンペーンなどに対する反応といった要素から得られる情報の、追跡管理、効果測定などの機能、あるいは、見込み顧客の属性情報、企業側からのアプローチへの対応状況といったデータの一元管理などを担う。