ソニーは、自社のネットワークビジネスの一環として、新機軸のアフィリエイトサービス「BLOGENT(ブロジェント)」を4月9日より開始した。初年度には3万人の会員獲得をめざし、同社が手がける動画共有サイト「eyeVio(アイビオ)」や、ウィジェットサービス「FLO:Q(フローク)」 との連携も将来的に見据える。

日本国内のアフィリエイトといえば、「Amazonアソシエイト」や「楽天アフィリエイト」、「リンクシェア」などが人気を集めているが、後発となるBLOGENTでは、個人ブロガーの"積極支援"をコンセプトに掲げて他社サービスとの差別化を図るとともに、アフィリエイト参加者(アフィリエイター)の新規開拓をねらう構えだ。本サービスの目玉となるのは以下の3点。

  1. ダイレクトリンク広告 …… 商品を販売しているEC事業者のサイト(以下「ECサイト」)のURLをそのままブログに貼り付けられる
  2. 簡易ブログ記事投稿 …… BLOGENTログイン後の管理画面から、商品画像付きの記事がブログに投稿できる
  3. 1円からの報酬の還元 …… 「ソニーポイント」1beat(1円相当)からの交換が可能

BLOGENTのサービス概要

コーポレートディベロップメント部BLOGENTプロジェクト室室長 喜多昭彦氏

まず「ダイレクトリンク広告」についてだが、従来型のアフィリエイトでは、商品のリンクを掲載する際には専用のタグを埋め込む必要があった。しかしBLOGENTでは、アフィリエイターはブラウザのアドレスバーに表示されているURLをコピーして、自身のブログ記事からECサイトにリンクさせるだけでよい。ECサイト側では、リンクを経由してやってきた顧客のリファラーを参照することによって、「顧客がどのサイトからきたのか」を検知できるというしくみだ。アフィリエイターを対象にソニーが行った独自調査によると、アフィリエイトサービスに欲しい機能として「ECサイトのURLを使った直リンク」を挙げるユーザーがもっとも多く、全体の52.3%にも上ったという。「ダイレクトリンクの潜在的なニーズは大きい」(BLOGENTプロジェクト室室長 喜多昭彦氏)。ECサイトにとっても直リンクが増えればサイトの評価が上昇するため、SEO(サーチエンジン最適化)対策になるというメリットがある。

「簡易ブログ記事投稿」機能は、その名のとおりBLOGENTのサイトから自分のブログに記事を投稿できるというもの。BLOGENT内に設置された投稿フォームを使って、記事の執筆はもちろんのこと、フォントの変更、画像の挿入といった基本的な編集作業、および投稿を行える。管理メニューからは、アフィリエイトで取り扱い可能な商品をすべて検索することが可能で、製品のスペックもチェックできる。サービス開始時(2008年4月9日時点)における動作確認済みブログサービスは、So-netブログ、Seesaaブログ、livedoorブログ、ココログフリー。

コーポレートディベロップメント部ネットメディア開発担当チーフプロデューサー 本間毅氏

また、報酬の総額が一定金額に達するまで支払いを行わないアフィリエイトサービスもある中で(たとえば「Amazonアソシエイト」の場合は5,000円の下限が設定されている)、1円から報酬が受け取れる「一円からの報酬の還元」は、アフィリエイターにとっては魅力的だ。ただしBLOGENTでは報酬は現金ではなく、「ソニーポイント」によって支払われる。ソニーポイントは、BLOGENTに参加しているECサイト「SonyStyle」内において、1点(1beat)につきSonyStyleチケット1円分と交換することができる。ほかにも音楽ダウンロードサイト「mora」や、電子書籍配信サービス「Timebook Town」などでも使用できるが、BLOGENTで得た報酬は、基本的にはソニーが運営しているサービス内でしか利用できないため、たくさん稼ぎたい人には物足りないかもしれない。「将来的に現金報酬へと移行する可能性があるのか?」という質問には、「個人に関しては現時点ではソニーポイントのみ」と明言を避けつつ、「法人アフィリエイターに対しては現金での支払いも検討する」(ネットメディア開発担当チーフプロデューサー 本間毅氏)と含みを残した。

まずはSonyStyleから、参加サイト拡充が課題

BLOGENTの商品検索結果

ところで、今回のサービス開始と同時にBLOGENTに参加しているECサイトは、SonyStyleのみだった。ソニー側としては「ECサイトの拡充は急務」としながらも、ウォークマンやデジタルカメラといった同社の「主力製品」と競合するような他社の製品に関しては、当面のところ取り扱う予定はないという。「ソニーの製品を好きな方に集まっていただき、この方々に満足いただけるようなECサイトを探していく。もちろん、ソニーのファンという人でもデジタルグッズにしか興味がないわけではないから、グルメや旅行などいろいろなことをやれると思う。BLOGENTはライフスタイルを軸として考えている。まずはソニー商品のある生活を提案したうえで、その中で一緒にあって違和感のないものから拡充していきたい」(喜多氏)。

BLOGENTにおいては、「ダイレクトリンク広告」「簡易ブログ記事投稿」機能を実装してアフィリエイト参加への敷居を下げる一方、自社製品を中心に取り扱うことによって、参加者を絞り込んでいる点が興味深い。誰でも気軽に参加できるようなシステムを整備しておきながら、前述の「ソニーの製品を好きな方に……」とのコメントにもあるように、運営者が参加者をあえて選別しているとも見てとれる。これを自己矛盾と片付けることはたやすいが、BLOGNETに関してはAmazonなどとはポジショニングが異なっていること、メーカーが運営するアフィリエイトサービスであるということを忘れてはいけないだろう。ソニーの主眼はネットサービスで利益を上げることではなく、「BLOGENTを触媒として自社製品のマーケットを育てる」ことにあるかもしれないのだ。