内閣府はこのほど、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の実現度指数を公開した。

同調査は、2007年12月に政府が取りまとめた「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に記載された「仕事と生活の調和」実現度指標のあり方をもとに、内閣府の男女共同参画会議「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に関する専門調査会が検討を行い、まとめたもの。日本国内の社会全体でみた仕事と生活の調和の実現度を数量的に測り、評価/分析することによりワークライフバランス実現の阻害要因や、取り組むべき政策とその優先度の把握することを主な目的としている。

今回まとめられた指数は、仕事と仕事以外の家庭生活や、地域/社会活動、学習や趣味/娯楽等など暮らし全般の活動分野から、健康や休養の状況など幅広い分野にわたって、個人の状況のみならず、個人がさまざまな活動を選択することができるような官民による社会基盤の環境整備状況についても指標化が行われているのが特徴だ。また、労働者だけではなく、無業、高齢者を含めた多様な人々を対象にしている。指標は、個人の暮らし全般にわたるワークライフバランスの実現状況を表す"個人の実現度指標"と、それを促進するための官民の取り組みによる環境の整備状況を表す"環境整備指標"の2つに分類され、それらを実現する代表的な構成要素を、それぞれ2002年を基準に進展度合いの指数として算出されている。

個人の実現度指標では、さらに「仕事・働き方」「家庭生活」「地域・社会活動」「学習や趣味・娯楽等」「健康・休養」の5分野ごとに評価。5分野のうちもっとも指数が高いのは「家庭生活」で、1997年に98.1ポイントだった指数が2006年には101.6ポイントにまで上昇している。中でも「男女の家事・育児等への関わり方」が93.0ポイントから104.0ポイントへと飛躍的に向上し、分野全体の指数を引き上げる要因となっている。これに対して「家族で過ごす時間」は、2002年から低下のままほぼ横ばいで推移している。

また、「仕事・働き方」の項目は2000年までは緩やかな上昇にとどまっていたものの、2001年から上昇率がアップしている。さらにこの項目を、働く時間や場所等の選択の可能性や待遇面での公平性等を示す「柔軟な働き方」、女性や高齢者等の就業可能性を示す「働く人の多様性」、仕事の拘束時間や収入面での自立可能性を示す「過重な負担のない働き方」の3点からみた場合、「柔軟な働き方」と「働く人の多様性」が全体の押し上げ要因となっている。中でも柔軟な働き方の項目を押し上げているのは、「待遇面での公正性」と、育児休業制度の利用者の増加等を反映した「柔軟な働き方の選択可能性」で、働く人の多様性は「女性や高齢者等を含めた多様な人の参画」がけん引する要素となっている。反面、「出産・育児等に影響のない就業」は、2001 - 2002年にかけて押し上げ要因となったものの、以降は一進一退で推移。「過重な負担のない働き方」は、近年のフリーター数の減少などにより「収入面での生活の自立」が促進されたものの、それに伴う通勤時間の増加が「仕事のための拘束時間」の低下を招いた結果、それぞれの要因により相殺されて横ばい状態を続けている。

一方、指数の低下が顕著な分野は「地域・社会活動」。2001年を境に低下に転じ、ピーク時の100.7ポイントから2006年には95.7ポイントにまで後退している。また、2001年までは上昇傾向にあった「学習や趣味・娯楽等」も以降は低下を続けている「健康・休養」は、2002年にそれまでの減少傾向から続上昇に転じたものの、2006年は再び低下に戻っている。その要因では、「休養のための時間」が2002年以降増加する一方で、「心身の健康の保持」は低下したまま横ばい状態にあり、休養のための時間が増えても、仕事がもたらすの健康阻害やストレスは改善されていない状況が挙げられる。

環境整備指標では、「収入面で自立する機会が設けられているか」「働きながらさまざまな活動を行う機会が設けられているか」「働き方・生き方を選べる機会が設けられているか」「健康を維持するための機会が設けられているか」などの視点をもとに評価。公共職業安定所の求職者の就職率や離職者訓練終了後の就職率といったデータから、次世代法に基づく一般事業主行動計画策定・届け出企業数、次世代法に基づく認定企業数、短時間勤務や育児・介護休業など各種制度を設けている事業所の割合などの統計をベースに、年別の指数が算出されている。その結果、1997年から2002年までは100 - 100.5ポイントの間で概ね横ばいで推移していた指数が以降急速に上昇し、2006年には103.9ポイントとなり、官民の取り組みによる環境整備が進みつつある状況を示した。