日本レコード協会は、2007年度「音楽メディアユーザー実態調査」を実施、このほどその報告書が発表された。それによると、有料音楽配信サービスの利用経験率は大学生から20代社会人を中心に前年度より増加する傾向が見られた。一方で、携帯電話に保存された「着うたフル」のうち、無料サイトからダウンロードされた曲が有料サイトからの約3倍存在していることがわかった。

同調査は、音楽CD・DVD、着うた等の購入者の実態を把握すると共に、ユーザーの意識や関連ハード、インターネット利用等の環境変化を明らかにすることを目的に、年1回実施されているもの。定量調査は東京30km圏在住の12~69歳の男女(小学生を除く)を対象に2007年10月1日~10月26日の期間に実施、1,200サンプルを抽出。定性調査は女子中学生/男女高校生/男女大学生ら6名4グループを対象に2007年12月6日~12月8日に実施したもの。

インターネット有料音楽配信サービス利用実態

調査内容のうち、インターネット有料音楽配信サービスについての設問では、サービス利用経験率は9.0%で、昨年の8.4%から増加傾向が見られた。過去半年間の利用率も4.6%から5.4%に増加しており、特に大学・専門学校生と20代社会人がその傾向を牽引している。

この半年間に「インターネットによる有料音楽配信サービス」を利用しましたか?

利用する理由については、「必要な曲だけ手に入れることができるから」が最も高く62.1%。これは昨年・一昨年の結果と比較しても選択する人の割合が増えている。また、「レンタルだと返却が面倒」「場所を取らずに保管できて便利」なども回答者数を増やしており、特徴的な利便性が浸透してきていることを伺わせる。

あなたが「インターネットによる有料音楽配信サービス」を利用した(利用している)理由は何ですか? (複数回答)

反対に、有料音楽配信サービスを利用しない人にその理由を聞くと、「購入したCDで音楽を聴く方が良いから」という回答が43.9%と最も多く、特に50代では約6割を占めている。女性に多い理由として、「どのサイトを利用してよいかわからない」「支払いの仕方がわからない」など、利用方法に関する理由が多く挙げられた。一方、中学生では「値段が高い」、高校生では「着うたフルで十分だ」という回答が平均を大きく上回っている。

あなたが「インターネットによる有料音楽配信サービス」を利用しない理由はなんですか? (複数回答) ベース:有料音楽配信サービス未利用者(N=672) ※ハイライト部は全体平均よりも5ポイント以上高い箇所。(以下同じ)

今回の同調査において、過去半年間のCD購入率は44.2%、レンタル利用率は29.8%となっているが、前年と比較すると、「購入のみ」または「レンタルのみ」の利用者は減り、両方を併用している人が増加している。さらに、CD購入・レンタル・有料音楽配信サービス全てを利用している人は、全体の2.0%という結果になった。一方で、「有料音楽配信サービス」のみを利用している人は0.9%に留まっている。

携帯電話での着うた・着うたフルの利用実態

着メロ、着うたのダウンロード利用実態については、着メロの利用者数が前年と比較して大きく減少しているのに対し、着うた・着うたフルの普及が進んでいる現状が見られた。過去半年間のダウンロード曲数でも、着メロの8.0曲(前年度比 -0.3曲)に対して着うたフルが14.5曲(同 +1.2曲)と、その伸びがうかがわれる。また、携帯電話への着うたフルの保存曲数は平均18.9曲だが、大学・専門学校生においては男性では36.8曲、女性では29.7曲と特に高い数字を示した。

携帯電話・PHSで「着メロ」や「着うた」などをダウンロードしたことはありますか?

「あなたはこの半年間で何曲、着メロ/着うた/着うたフルをダウンロードしましたか?」「あなたは、ご自身の携帯電話に着うたフルを何曲位保存していますか?」ベース:それぞれの利用者 着メロ(N=413)・着うた(N=464)・着うたフル(N=283)

着うたフルの録音ソースについての設問において、全体では有料サイトからのダウンロードが6.5曲であるのに対し、無料サイトからのものが20.4曲と約3倍に上ることが明らかになった。特に男性の高校生では、無料サイトからダウンロードしたものが104.9曲と桁違いに多い。また、ファイル交換ソフトでパソコンからコピーした曲数は、ほとんどの世代で1曲以下であるのに対し、男性の20代社会人は19.3曲となっている。

あなたがご利用されている携帯電話に録音されている「着うたフル」についてお伺いします。以下のそれぞれにあてはまる曲の割合はどの程度ですか?

同調査ではこのほか、若年層の音楽に関するコミュニケーションの実態や音楽に対する意識について、中・高・大学生を対象にグループインタビューを行っている。それによると、若年層は音楽を鑑賞するための"作品"としてではなく、消費の対象として捉える意識が見られるという。大学生では音を楽しむことにも意識が向くようになるとしながらも、全般的に音楽に対する"こだわり"が低いと分析している。