迷惑メールの相談業務などを行っている日本データ通信協会はこのほど、「迷惑メール処理」に費やす企業・個人の被害・対策費の総額が、年間で約8,269億円に上るとする調査結果を発表した。

同調査は、迷惑メールが日本経済に及ぼす影響について、(1)生産面への被害、(2)ISPなどにおける対策と投資、(3)事業所・行政機関などにおける対策と投資、(4)消費者における対策と投資、の各項目について、2007年10月からWebアンケートや有識者ヒアリングなどにより実施。総務省がこのほど開いた「迷惑メールの在り方に関する研究会」の第6回会合で調査結果を報告した。

(1)の生産面への被害としては、アンケートで得たデータを基に、各産業における迷惑メールの受信比率、受信数、処理時間を算出。この算出結果や実質GDPなどのデータを基に、「迷惑メールを処理するために必要な時間」を労働時間の損失とみなすことにより、「迷惑メール処理に労働時間を浪費しなければ達成されていたであろう国内総生産額」を生産関数を用いて推計。その結果、迷惑メールによる生産面への年間被害額は約7,300億円にも上ることが分かった。

また、(2)のISPなどにおける投資としては、迷惑メール対策のためのメールサービス、ヘルプデスク運用担当者の負荷増大、ホスティングサービスの無償提供などにかかる費用を合算、約319億円に上ることが明らかとなった。

(3)の事業所・行政機関などにおける投資については、情報システム担当者による迷惑メール対応コストや迷惑メール対策ソフトのライセンス費用などに約518億円、(4)の消費者における投資についても、同ソフトにかかる費用で約132億円が費やされていると算出。(1)~(4)の金額を合わせると、迷惑メール処理に費やす企業・個人の被害・対策費の総額は、年間で約8,269億円に上る。

迷惑メール防止に関しては、総務省が受信者の同意を得ていない広告・宣伝メールを全面禁止するとともに、現在"野放し"状態となっている海外発の迷惑メールも規制の対象とするとした、迷惑メール防止法改正案を国会に提出。経済産業省も、受信者の同意を得ていない広告・宣伝メールを全面禁止し、刑事罰も設けた特定商取引法及び割賦販売法の改正案を国会に提出している。

同調査を担当した日本データ通信協会 担当部長の飯沼博明氏は、「迷惑メール対策はこれといった決め手がないのが現状。迷惑メールを減らすには、法的対応に加え、送信国のそれなりの組織と送信を防ぐための国際的連携を進めるなど、総合的・多面的な対策が必要ではないか」と話している。