HAMLET

英オックスフォード大学のBodleian Libraryは3月26日 (現地時間)、米Folger Shakespeare Libraryと共に、1641年以前に印刷されたウイリアム・シェイクスピア作品のクォート版(Quarto Edition)をデジタル化すると発表した。その成果は「Shakespeare Quartos Archive」として無料で一般公開する。

2008年4月から約1年間のプロジェクトとして、1641年以前の75のクオート版を1つのデジタルコレクションにまとめる。アーカイブサイトでは高解像度イメージとテキストを、テキスト検索、マーキング、タギング、テキストとイメージのオーバーレイなど豊富な機能やツールと共に提供する計画だという。

シェイクスピアは1590年頃から1613年頃に数々の作品を書き上げたと見られているが、本人の原稿が残されていないため、当時のシェイクスピア戯曲を知る上で、生前時の印刷を含むクォート版が貴重な資料となっている。シェイクスピア研究者や学生、演劇関係者、出版関係者の多くがクォート版に大きな関心を抱いているものの、稀少かつ損傷しやすい状態であるため閲覧が厳しく制限されている。

クォート版が注目されるポイントの1つとして、内容の違いが挙げられる。例えばデジタル化の最初のプロジェクトには複数の「ハムレット」が含まれるが、「To be, or not to be~」で始まる有名な一節ですら、クォート版によって全く台詞が異なるのを確認できる。この違いについては、シェイクスピア本人の手による出版物がなく、下書きに第三者が手を加えた、または脇役やライバル劇団が記憶した台詞が印刷されたというように様々な説がある。シェイクスピア本人の作品に近いという点では、劇団の2人が編集し、シェイクスピアの死の7年後に出版されたファースト・フォリオが重視されるが、クォート版はシェイクスピアを中心に当時の英国の演劇の様子を知る資料となる。

デジタル化プロジェクトに参加するMaryland Institute for Technology in the Humanities (MITH)のNeil Fraistat教授によると、1年間のプロジェクトを通じて、1641年以前のクォート版の約70%にアクセスできるようになるそうだ。同プロジェクトでデジタル版公開の効果をアピールし、全てのクォート版のデジタル化を目指すという。