米連邦通信委員会(FCC)は3月20日(現地時間)、700MHz帯の周波数オークションの結果を公表した。同オークションはAからEまで5つのブロックに分けて実施され、そのうち落札事業者に無線ネットワークの開放を義務づけるオープンアクセスで注目を集めたCブロックは、全10ライセンスのうち主要な6つを米Verizon Wirelessが獲得した。一方、無線通信事業への新規参入が注目された米Googleは、今回はどのブロックのライセンスも獲得できなかった。

「Auction 73」と呼ばれる今回の700MHz帯の周波数オークションは、2009年2月に米国がデジタルTV(DTV)へと移行することで空白となるUHF帯が対象。次世代ブロードバンド通信での利用をにらみ、既存のモバイル通信事業者だけでなく、衛星放送業界、さらにはGoogleといったインターネット企業を巻き込み、多くの新規参入者がオークションに名乗りを上げたことで注目を集めた。今回のオークションではGoogleを中心とした新規参入者が求めたオープンアクセスや公平性が認められ、この種のオークションでは異例となるオープンアクセスがCブロックの上位周波数帯を獲得した事業者に義務付けられた。Verizon Wirelessなどの既存事業者はこの取り決めに反発してFCCを相手取った裁判を起こしたものの、後にこれを受け入れて訴訟を撤回している。

落札総額は過去最高の195億9242万ドルに達した。全1090ライセンスのうち、約69%にあたる754ライセンスが既存事業者以外の99社によって落札されたという。結果においても新規参入事業者が目立つオークションとなった。中でも衛星通信事業者の米EchoStar Communications傘下のFrontier Wirelessは、Eブロックの全176ライセンスのうちの168を獲得。FCCによれば、これは全米規模の通信サービスを実施するのに十分な水準だという。

なお5つのブロックのうちDブロックのみは約13億ドルの最低落札金額に達せず、落札が見送られた。Dブロックは公共機関の緊急時用に用意された特殊なブロックで、消防や警察などが現在異なった無線周波数帯を利用してることに起因する問題を解消し、緊急時の円滑な連携を実現することを想定している。FCCはAuction 73で落札されなかったライセンスを再びオークションにかける「Auction 76」の実施を発表していたが、Dブロックをその対象とせず、ライセンス販売方法を再検討するとしている。

今回のオークションで最大の勝者となったのは、米Verizon Communicationsと英VodafoneのジョイントベンチャーのVerizon Wirelessだ。最大の目玉とされたCブロックで勝利し、最も広い周波数帯の獲得に成功した。米Wall Street Journal紙が報じたアナリストの分析によると、Verizon Wirelessは今回のオークションに96億3000万ドルを費やした。また米国最大の携帯事業者でVerizonのライバルであるAT&TはBブロックを中心に細かい周波数ライセンスを買い集め、その投資金額は66億4000万ドルだという。AT&Tはオークションの直前に別の企業から周波数帯を大量に買い込んでおり、今回のオークションにはあまり積極的に関わっていなかった。なお、VerizonとAT&Tに次いでオークションへの投入金額が多かったのは携帯向け通信チップを開発する米Qualcommで、ライセンスの獲得に10億ドルを費やしたと同紙は指摘している。

700MHz帯のライセンス交付は、2009年2月以降のDTVへの移行完了後に順次行われる見込みで、次世代無線ブロードバンド通信の本命の1つといわれる「4G」ネットワークの構築に各社がまい進することになるとみられる。